アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
永瀬東 No.4
-
数日後の昼休み。
教室で本を読んでいると、前の席から声が飛んだ。
「とうとう、学年一の東も彼女持ちか〜」
その言葉の内容に半分めんどくさくなりながら顔を上げると、ニヤついている顔が目の前にあった。
「なんのことだ……」
「そんな顔しなさんな。別に嫌味で言ったわけじゃないって」
不機嫌そうな俺に、そいつの表情も和らぐ。
俺の前の席にいるコイツは、鷹田直樹(たかだなおき)。名前がアレだが、一応女子。俺の小学校からの幼馴染みだ。
「でも意外だったね。あんた結構、一途だと思ってたんだけど、そうでもなかったんだ。応援して損した」
「だから、なんのことだよ」
再度問うと、直樹はわざと不貞腐れた表情をとった。
「彼女、出来たんでしょ?」
「はあ?」
思わず声を上げると、直樹は驚いたように首を傾げた。茶髪のポニーテールが肩に掛かる。
「あれ?違うの」
「ちげーよ」
「えー? あんた、D組の鈴木咲(すずきさき)と付き合ってんじゃないの?」
「知らねーよ。そんな奴。だいたい、どこ情報だよ」
俺が聞くと、平然と答えが返ってきた。
「榊原杏(さかきばらあん)」
「呼びましたか?」
丁度いいタイミングで俺の机の隣に影が立った。
俺はそいつを見上げながら、睨んでやる。
「杏〜……、お前なぁ……」
榊原は高校に入ってから俺と直樹にくっ付いてきた女子生徒。無表情で何を考えてるか分からない奴だが、常備しているファイルの中から顔文字が印刷してある紙を取り出して、器用に自分の感情を伝えている。
「杏。東が鈴木咲と付き合ってるってホント?」
直樹が聞くと、杏はこくりと頷く。
「はい。この前、一緒に図書室で勉強してたのを見ました」
一緒に図書室………。ああ、……あの時か。
「別に、付き合ってるわけじゃない。勉強を教えてくれって言われたから、見てやっただけだ」
手短かに説明すると、直樹が「なあんだ」と呟く。
「アタシはてっきり、東が豊富君のことを諦めて自暴自棄になってんのかと思った」
「……自分もそう思いました(・ω・)ノ」
「…ったく、何勝手に妄想してんだよ」
「妄想じゃないよ、心配してやったんじゃない」
俺の言葉に直樹が文句を言う。それに杏もウンウンと便乗していた。
(………………)
実際、コイツらには世話になってる。
俺は悠也に一目惚れした瞬間、失恋したも同然で。一人落ち込んでいた時に直樹と杏が相談に乗って励ましてくれた。
直樹は幼馴染みで俺のことをよく理解してくれているから、相手が男だと言った時も『やっぱ、東って変わってるね』で終わらしてくれた。
杏も……何だかよく解らんが、腐女子というオタクの一人らしく、俺の話を聞いても全く引かなかった(こんな顔文字の紙出してた→\(//∇//)\)。
この二人がいてくれて、俺の愚痴を聞いててくれていたからこそ、俺は一年間ずっと耐えることが出来たんだと思う。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 301