アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
豊富悠也 No.2
-
キーンコーン カーンコーン───………。
「……!」
突然聞こえたチャイムに現実へ引き戻される。
気づけば、先程まで廊下に出ていた生徒達もいつの間にか教室の中に入ってしまっていた。
(仕方ない、か……)
無情に鳴り響くチャイムに後押しされ、悠也は勇気を出して教室の扉を開けた。
顔を出すと、やはり悠也以外の生徒がすでに席に着いていた。
当の本人は入って来た悠也の顔も見ずに、いつものように小説を読んでいる。
(何で襲ってきた奴が平気な顔してんだよ!)
いつも通りの東に、早速怒りが湧いた。
少しも顔を動かさない東の前を通り過ぎ、窓側の自分の席に座る。
「………………」
しばらく後ろから見てみるが、やはり東は悠也のことをチラリとも見ない。
まるで、何事もなかったかのように────。
(忘れようとしてるのか……?)
ふと、そんなことが頭に浮かんだ時、後ろから肩を叩かれた。
「おはよ」
続いて挨拶が聞こえてくる。
後ろを振り返ると、クラスメイトの加藤千彰(かとうちあき)が笑っていた。
「はよ…」
返事をしようするが、同じタイミングで大きなあくびが出てしまった。
それを見た千彰が苦笑する。
「おう、今日は特別眠そうだな」
「まあ、ちょっと色々あって……」
何があったかは言えないけれど、心配してくれている友達に返事を返さないのは悪い。
苦し紛れに言い訳すると、千彰が首を傾げた。
「……お前、ちょっと顔赤くねえか?」
「え?」
言われて、思わず頰に手を当てる。
確かに、心なしか少しだけ熱い気がする。
起きた時は、東のことばかり考えていたせいで、ちっとも気づかなかった。
「うーん、でもちょっとだし。起きたばっかだからさ。別に大したことねえよ」
「そーか?そんなら良いけど」
自分の体温を気にしないように、悠也は半ば強引に話題を終わらす。
体調が悪いかどうかと言われると微妙だ。
千彰に言われた通り、顔は熱いし、腰や背中は痛むし、ベッドから起き上がる時も身体がだるかった。
だからと言って、学校を休むわけにはいかない。
悪いといっても、ほんのちょっとだ。ベッドで休むほどではない。
(授業も何となく聞いてればいいし……)
そう思っていると、いつか言われた注意が聞こえてきた。
(「いいわけねーだろ。何のための授業だよ。教師はお前の子守唄歌ってるわけじゃねーんだよ。あの時間はテストの答え言ってる時間なんだから、一時間ぐらい、きちんと聞け」)
「………………」
(うるせえよ……)
そう、頭の中で反論した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 301