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豊富悠也 No.7
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「豊富ー、お前もう大丈夫なのかー?」
数日後、登校してきた悠也に千彰が心配の声をかけてきた。
「あーうん。もう平気みたい」
倒れた日はどうなるかと思ったが、東が面倒を診てくれたのと三日間の休養のおかげで、悠也の体調はすっかり良くなった。
「でも三日も休んじまったからな〜。急いで間に合わせねーと」
「あ〜、確かに。問題はそれだよな。今週国語の小テストあるし」
「えっ、マジで!?」
悠也の声に千彰は首を傾げた。
「あれ?知らなかった?前の国語の時間に言ってたろ」
「えー……マジかよー……」
千彰の言葉に愕然とする。
丸三日間、授業を休んですぐテストだったなんて。
「……あっ、でも、国語の村山は成績にとらないって言ってただろ!?」
「ああ。でも今回は入れるかもって」
「………マジか」
僅かな希望も消え去り、悠也は絶望的な気持ちになった。
思わずため息が出て、頭が下がる。
マンガは嫌になるほど読んだ悠也だが、小説など、挿し絵が無いような本はほとんど読んだことがない。
読解力の乏しい自分には、国語が一番苦手な教科だと言えるだろう。
更に休んでいた分の課題や問題がある。
(地獄だ………)
「──お前、そこまで落ち込むことないだろ」
頭を上げない悠也を励ますように、千彰が肩を叩く。
「だって課題あるし、俺授業出てないし、国語無理だし……」
「まあ、お前も大変だろうけど」
「お前はまだいいよっ!俺なんか、風邪で時間削られたから評価下がってんだよ!そんで今回の小テストも悪かったら、成績だだ下がりだかんな!?」
「……確かに。お前、特に文法ダメだもんな」
「あーもー!時間ねーのに…っ!」
───教えてくれる人がいない。
前だったら東に教えてくれと頼めるのに、今は気まづくて、そんなの言えるわけがない。
だから今回は自分一人の力でやらなければいけない。それが一番の苦手教科だとしても。
「……くそ」
(何で、よりによってこういう時に……!)
こんな悠也のイライラはどうせ東には届かない。悠也がどんな気持ちなのか、東は知らない。
そのことにも、イラついてしまう自分がいる。
届いてほしいのに、伝わらない。
言いたいけど言えない。
でも、この空気を変えたい。
そんな想いは届かない。
「そんなヤケになんなって。ま、時間はあるけど短いだけだし。範囲もそんな広いわけじゃないから」
千彰は険しい顔の悠也を宥めてくれる。
そんな千彰につられ、悠也も少し落ち着いてきた。
「うん。……あんがと」
とにかく、こんなとこで文句を言ってても何も起きない。無駄な時間を過ごすだけだ。
教えてくれる東のような存在がいれば、これだけのことはないが、今は仕方がない。
(……うしっ!たまには頑張るか!)
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