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加藤千彰 No.8
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翌朝の放課後、俺の部屋に珍しい来客がやってきた。
ノックが聞こえた時、日向が来てくれたのかと思って勢いよくドアを開けたのだが、そこに立っていたのは日向じゃなかった。
「よぉ」
「豊富?どした?」
「その……、相談があって……」
意外な客に驚いていると、悠也はもごもごと説明した。
何だ、ただの相談か。
悠也からの相談はよく聞くけど、部屋に遊びにくるのは数回しかなかった。
「今、入っても大丈夫?」
「おお、俺は別にいいんだけど」
悠也は考えてる事とかが顔によく出る。
俺の顔を見ないから、話すのに緊張してるんだと思う、多分。そういうとことかは、ちょっと日向に似てるんだよな。
部屋に上がらせ、お互い向き合うようにベッドの上に腰掛け、まだ開けてなかった菓子の袋を悠也に投げた。
「で、話って何?」
「あ、あの。言う前に言っとくけど、これ、あくまでも友達の話だからな!」
「あー、はいはい。友達な」
俺もそれ、たまに使うワ。
話の内容が内容だったら、『友達』の話として言ったりするよなぁ。
「えと、その友達がこの前に永瀬に告白されたらしくて────あ、永瀬東って知ってる?」
「ああ、お前と同じ部屋の奴だろ。永瀬……ひがし?あれ、何て読むの?」
「あずま。永瀬東」
「ふーん」
あずまか。長年の謎が解明されて、ちょっとスッキリした。
「何か『好きだ』って言われたみたいで。それで『嫌じゃない』って答えた、らしいんだけど……」
「そんで?それをお前に相談してきたわけ?」
「う、うん……」
へぇー、東って悠也のことが好きだったんだ。
イケメンのくせに残念な奴だなー。俺も人のこと言えねーかもしんねぇけど。
「……それってさ、結局付き合うことになったのか?」
「え!?いや、付き合うまでは………」
「だって『好きだ』って言われたら、普通付き合うことになるだろ」
「そ、そうなのか?」
首をかしげる悠也に、俺も首をかしげる。
「付き合ってねーなら、その関係って何なの?気まずくね?」
「だから!こっちは───俺も、悩んでんじゃねぇか……」
必死に誤魔化そうとする悠也の話を聞いて、俺はうーん、と考え込んだ。
そして、少し間を置いて口を開く。
「何か、永瀬が可哀想だな」
「え?」
悠也の目がパチクリと瞬いた。
構わず、その言葉の意味を説明する。
「だって、勇気出して『好き』って言ったら、曖昧に『嫌じゃない』なんて言われたんだろ?告白した側としては、あんまいい答えじゃねーよなぁ」
「で、でも嬉しそうな顔した……らしいしっ」
「えー?俺だったら、嫌だな〜。そりゃ、言われた直後は良いけど、その後ずっと何も音沙汰無しってもどかしい感じしねぇ?」
「もど、かしい……?」
きっと、悠也の中ではそれが精一杯の答えなんだろうな。その先のことなんて、すぐには理解できなかったんだ。
だけど、時間が経つにつれ、その微妙な違和感に気付き始めたんだろう。
「だからさ、脈ありなのか無しなのか、はっきりさせたほうがいいんだって。付き合うのか、そういうのは無理なのか、どっちか」
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