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加藤千彰 No.9
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「ど、どっちかじゃないと駄目か……?」
悠也は不安そうに俺の顔を覗いてくる。
俺はキッパリと言い切ってやった。
「駄目に決まってる。お前だって、中途半端な答えは好きじゃないだろー?」
「うーん……、まぁ………」
まだ難しそうな表情で唸っている悠也に待ちくたびれ、その手の中にあった菓子の袋をとった。
「相談って、これで終わり?とりあえずちゃんと返事してやれよー、って言っとけ」
「……うん、分かった。あんがと」
思ったより素直に悠也は立ち上がり、玄関へと歩いていった。
俺も見送るため、その後を追いかける。
─────と……。
「……っと、うわぁ!?」
「えっ、ちょ、うぎゃ……!」
突然、盛大にコケてしまった。
ただの俺の不注意だが、俺の前にいた悠也も巻き添えになって俺の下に転がっていた。
「い……ったぁ…。おい、加藤!何してんだよっ」
「悪ぃ悪ぃ。ちょっと転んで……って、うわ!?こう見ると何か床ドンしてるみてぇ!」
「はあ!?何だよそれ、気持ち悪ぃ。つか、重い!暑い!!」
ジタバタともがく悠也や色々シチュエーションが合ってることに面白さを感じて、俺は声を上げて笑った。
「でもさー、こういうのってえ、誰かに見られたりしてフリーズして勘違いされたりとか───」
起き上がろうとして顔を上げて、俺のほうがフリーズした。
玄関のドアが半開きになって、怪訝な表情で俺達を見下ろしている誰かがいる。
こ、こいつって………。
「……加藤?んだよ、早く退けって────」
下にいる悠也も、俺の様子がおかしいと気づいたのか前の方を見る。
「……!!」
どうやら、悠也自身もこのヤバい状況に気がついたらしい。
俺と同じく、固まっている。
「な……、永瀬?何で………」
悠也が声を出した瞬間、東は俺を鋭く睨みつけた後、ドアを閉めて立ち去った。
早歩きで遠のいて行く足音が聞こえる。
「………………」
俺は急いで立ち上がり、悠也の背中を叩いた。
「行けよ、ほら」
「え!?いや、だって……」
確かに行きにくい空気だけど、逆にチャンスかもしれない。
その意味を込めて、もう一度背中を叩く。
「ちゃんと自分の考え、言えるかもしんねーじゃん」
「はぁ!?ち、ちがっ……!あれは俺じゃなくて!友達の……!」
「ハイハイ、『友達』ね。友達。じゃあ、その友達のことも言っといてやれよ。話せば解ってくれるって」
「……っ」
俺に言い包められたのが納得いかないのか、悠也はむくれた顔のまま、玄関から東の後を追いかけていった。
部屋に戻り、思わずため息が出る。
「───誤解解いてくれよー、豊富ー……」
小さく呟いた言葉なんて、誰にも届くはずがなかった。
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