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御薬袋日向 No.2
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日向が6年生になった頃に、家に弘一がやってきた。
両親が「家庭教師をやってくれるなら、ウチで寝泊まりすれば良いだろう」と言って、越してきたのだ。
「こんにちは、日向」
そう笑顔で挨拶してきた男を、日向は高く見上げた。
最初の印象は「なんて背が高い人なんだろう」ということだった。
玄関で大きなカバンを持っているこの男性が、自分の叔父なのかと日向はジーッと見つめた。
「やぁ、ヒロ。よく来たな」
「久しぶり」
仲良さげに挨拶を交わす父親と弘一を見て、日向の初対面に対する緊張感が少し柔んだ。
「日向、お前もちゃんと返事をしなさい」
父親に促されペコリとお辞儀を返すと、眼鏡の向こう側にある細い目が更に細くなった。
「僕のことは、もう憶えてないだろうな。日向が赤ちゃんの時に一回会ってるんだよ」
「……?」
「はは、流石に憶えてないだろ。俺だって、ヒロと別れた日なんて思い出せないんだから」
「それはまた別の話だろう」
日向はこんなに明るく話す父の様子は、初めて見たと思った。
弘一は長い腕を動かして、そっと眼鏡をかけ直す。
「ああ、もう俺は行くよ。行って帰ってくるだけだから、すぐに戻ってくるけどな」
「忙しいんだな」
「そりゃあ夫婦共々、仕事させてもらってるからな。おかげで、子供の勉強さえ見てやれない。たまに徹夜する時は、近所の家の人に預かってもらってるんだ。ほぼ同い年の友達が面倒見てくれて、助かってるよ」
「大変だな?」
「まあ、これからは弘一がいるから、しばらくは大丈夫だろ。じゃあ、行ってきます」
「ああ」
日向と弘一を玄関に残して、父親は出かけていってしまった。
日向は何を話せばいいのか分からなくて、ただ廊下に突っ立っていた。
日向が戸惑っているのを感じたのか、弘一はしゃがんで日向と同じ目線になるようにした。
「それじゃあ、日向。まず、僕の部屋に案内してくれるかな?」
優しく問われ、日向はすぐに頷いた。弘一は笑っていた。
こうして日向は入れてはいけない、悪魔のような人間を家に招き入れてしまったのだった。
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