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御薬袋日向 No.5
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夕飯の後の風呂から上がり、二階の部屋に入ると、弘一がすでに椅子に座っていた。
こうして寝る前に勉強を見てもらうのが、二人の日課になっている。
しかし日向は部屋に入った瞬間、弘一の様子がいつもと違うような気がすると感じた。
「あ、あの……。先生……」
不安になって呼ぶと、弘一がこちらを向いた。
その顔は、笑っていなかった。
「日向、これは何?」
弘一が見せてくる紙を見て、はっと思い出した。
「あっ…!」
数日前に返ってきたテストの答案用紙で、弘一に見せようと思ってたのだが、どこかに無くしてしまったものだった。探してもなかなか見つからず、そのまますっかり忘れ去られていたのだろう。
「さっき、机の裏から出てきたよ。テストは必ず僕に見せろって、いつも言ってるよね?」
「えっと…、見せるつもり、でした。でも、多分たまたま落ちちゃって、それで───」
「言い訳はいいから。見せられなかったのは事実だろう?」
「……ごめんなさい」
返す言葉もなく、日向はしゅんと小さくなりながら謝った。
しかし、弘一の説教はまだ終わっていなかった。
「それだけじゃなくて、何だこの点数は。僕とちゃんと、予習復習をした範囲だよね?正解しているものより、間違えてる問題のほうが多いんじゃないかな?」
「うぅ……」
指でバシバシと紙の表面を叩きながら、正論を言う弘一の顔を見てられない。
「つ、次から気をつけます……」
「それも何回も聞いたよ。でも、なかなか直せないね」
「………………」
もう、何も言い返せない気がする。
大人しく、説教が終わるまで待っているかと腹をくくっていると、それまで続いていた弘一の声が止んだ。
顔を上げると、弘一と目が合う。
「どうしたら、できないことができるようになるかなぁ」
「……できないものはできなくて、当たり前じゃないですか」
嫌味そのものを言われ、さすがにカチンときた日向は、頰を膨れさせて屁理屈を呟いてみる。
すると、真顔だった弘一の顔が『見たことのない笑顔』に変わった。
「───じゃあ、しょうがない。これからは少し、指導を変えさせてもらうよ」
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