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御薬袋日向 No.10
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「お、日向。すげーよ、夕陽!」
千彰の声に、いつからか自然に下を向いてしまっていた自分の顔に気づく。
目を前へ向けると眩しくて、思わず目を細めてしまう。
大きな太陽がちょうど沈みかけていて、ゆっくりと日向達から後退りしていく。
その光は川の水面に反射して、キラキラと輝いていた。
「うわぁ…、普段眩しいから見てなかったけど、よくよく見ると綺麗なんだな!」
「……う、ん………」
(どうしよう……、何で………)
その夕陽は、今の日向には美しすぎた。
このまま、真っ直ぐ歩いて行けば自宅へ着く。だけど、そこで待っているものに良いものなんて無い。
待っているのは、痛みと苦悩と快楽だけ……。
「………っ」
あまりの輝きに、何だか自分がとても汚いものに思えてきてしまった。
「いやぁ、これぞ当たり前の幸せってヤツかー?意外なところに絶景ポイントとか、あるもんなんだな〜…────………日向?」
千彰がこちらを振り返り、不思議そうな表情をしている。
顔に何か付いているのかと頰を触ると、触った指先が濡れていた。
「……ぇ?」
そこで初めて、自分が泣いてしまっていることに気づいた。
慌ててゴシゴシと袖口で擦るが、涙は次から次へと流れ出して止まらない。
「あれ……?何で………っ」
どうして、思い通りにならないのだろう。
いつもは涙くらい、我慢できたはずなのに。
泣くなと命令されれば、必死に我慢したのに。
止めないと怒られる。もっと酷い事をされる…。
そう思って瞬きをして泣き止もうとしているけれど、やはり涙は止まらない。
何かの糸が切れてしまったように、滝のように流れていく雫に日向は困惑した。
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