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御薬袋日向 No.11
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不意に、視界が暗くなった。
ギュッと体を固定され、千彰に抱きしめられているのを理解した。
無言で抱きしめてくる千彰に、どうすればいいのか更に慌てていると、千彰の声が上から降ってきた。
「───日向、何かあったの?」
「え………」
まるで、日向の心情を察しているかのような言い草に、どきりと心臓が跳ねる。
「急に泣き出すから……心配するだろ」
「………えっと…」
「泣きたいなら、泣けよ。そんなに辛い事があんなら、俺に出来ることをしてやる。何でも、相談しろよ」
「……!」
千彰は心配してくれている。
歳下にこんなみっともない姿を見せてしまって、日向は後悔に苛まれた(さいなまれた)。
それと同時に、胸の奥から何か大きなモノが込み上げてきた。
それは涙となって、日向の瞳から零れ落ちていく。
「う……っ、……ッ…」
千彰の学ランを掴んで、嗚咽を堪えて静かに泣く。
千彰は、そんな日向を強く強く抱きしめた。
その優しさが辛くて、悲しくて、嬉しくて……。
今にも、言葉に出てしまいそうになる。
(僕……っ、千彰が……千彰が………っ)
「───好き……」
心の声が聞こえてきて、ハッと驚く。
自分が勝手に言ったわけじゃない。そう言っている声は、すぐ耳元で聞こえてきた。
「好き……、日向、好きだよ……」
「え……、ちあ、き……?」
聞き間違えかと思ったが、その言葉を言うごとに腕の力が強くなっていっている気がする。
「ごめん……。いつか、言うつもりだったんだけど。どう考えても、今じゃないよな?でも、ごめん……。日向があんまりにも辛そうだったから」
本当に?
本当に、千彰が自分のことを好きだと言ってくれているのだろうか?
千彰の胸の鼓動が微かに聞こえてくるような気がした。
それは強くて、とても速い。
きっと今の自分の鼓動もそうなっている、と日向は思った。
「ずっと、お前のことが好きだった。ガキの時から、面倒見てくれて遊んでくれるお前が好きなんだ。……っは、気持ち悪いよな。一緒にいた、ただの歳下が好きなんてよ………」
笑いが混じった言葉にドキッとする。
日向だって、同じようなことを考えていた。
絶対、叶わない恋愛だと。好きになったところで良いことはないと。
(でも、そうじゃないのかな……?)
確認したくて顔を見ようとするけど、胸を押し返す力が出ない。
無意識に緊張しているのか、体が少し震えている。
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