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御薬袋日向 No.14
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「───はい……」
顔が熱くて下を向いたままだったけれど、やっと言えた。
今、上を向いたら千彰はどんな表情をしているだろう。
日向と同じように、頰を紅くしているだろうか。
見たいけれど、見れない。自分のみっともない顔も見られてしまうから。
「そっか……、分かった」
千彰は片方の手を離すと、もう片方の手で日向を引いて歩き出した。
「────ありがとう」
前を向いたまま歩く千彰から、そんな言葉が聞こえてきて、日向はもっと恥ずかしくなってしまった。
「うん……っ」
羞恥心に嘘はつけない。けれど、本音は恥ずかしさより嬉しさのほうが強い。
こんなに胸がドキドキするのは、生まれてきて今まで一度もなかった。
いつか止まってしまうかと思うほど、強く強く鳴り響く。
(これから、千彰と恋人同士になれるんだ…!)
その事実に、日向は宙に舞い上がりそうな気分だった。
この通学路が、ずっとずっと続けばいいのに。
千彰を好きになってから、毎日思う願望が今だけは本当に叶ってほしい願いだった。
それは千彰も同じなのか。
手を繋いだ二人は、いつもよりずっとゆっくりに歩いて帰っていた。
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