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御薬袋日向 No.15
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「随分、遅く帰ってきたねぇ。日向?」
指定された帰宅時間を過ぎてしまい、早く家に帰っていた弘一は日向を見据えた。
「こんなに遅刻するなんて、何か理由でもあったんだろうな?」
「え、えっと……」
言うべきか、言わざるべきか。
きっと、言わない方がいいに決まっている。
弘一のことは千彰に知られたくないし、弘一にも千彰の存在は知られたくなかった。
「……だんまりを続けて、何が面白いんだ?」
ジッと部屋の扉に背をつけて立ったまま、口を割らない日向に焦れたのか、弘一は日向に近づき強引に肩を掴んだ。
「……っ!うわ…!?」
ドン、と床に押し倒され、すかさず弘一が覆い被さってくる。
「まあ、いいか。悪い子な日向には『お仕置き』だね」
「……!!」
何度も経験した状況に背中に冷や汗が伝う。
弘一の顔が近づき、シャツをはだけさせようとされた途端、強烈な嫌悪感が日向を襲った。
「…っ、嫌……ッ!!」
「──ッ!?」
気がついた時には、勝手に体が動いていた。
日向は弘一の胸を思い切り突き飛ばし、せめてもの抵抗でぐるっと身体を丸めた。
初めて弘一に反抗できたことに、日向自身も内心驚いた。
そして、改めて自分の中で納得した。
(……自分が許せなかったんだ)
千彰という最愛の恋人ができたばっかりにも関わらず、こうやって他の誰かに流されてしまうことが怖くて、思わず手が出てしまったのだ。
日向の予想外の行動に、弘一は何も言ってこない。
ただ、日向の反抗は痛くも痒くもなかったようで、相変わらず日向の上にのしかかったままだ。
「…………っ」
どんな酷い事を要求されるだろう。そうやって日向がガタガタ震えていると、耳元で弘一の低い声が聞こえてきた。
「……近いうちに、ここを出て行くよ」
「え………?」
何の事かと目線を寄越すと、弘一の顔は近過ぎて見えなかったが、ゆっくりと弘一の体が起き上がっていった。
「せっかく休養を貰えたのに、人手不足の高校に呼ばれてね。たまにある事なんだけど、すぐに向かわなきゃならない」
そう言って、日向の上から身を引いていく。
日向は何が何だか分からずに、弘一の話を聞いていた。
「残念だけど、数日後には家に帰るよ。色々、準備しないとね」
がちゃんと部屋の扉を開けて、振り向きざまに日向を見下ろす。
「……悪いけど、僕は諦めないよ」
その顔は日向を抱いている時の、あの『笑顔』だった。
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