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御薬袋日向 No.17
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生徒総会が終わった放課後、生徒会室で片付けの作業に追われていると、後輩の一人がファイルを持って聞いてきた。
「御薬袋先輩、このファイルどこに置いとけばいいですか?」
「え?うーん、これって職員室に置いてあったから、戻しておけばいいと思うけど……」
「じゃあ、置いてきますね」
「あ、僕が行ってくるよ。同じようなのとまとめて持って行きたいし、戻す場所解ってるから。代わりに任せたいのがあるんだけど、いいかな?」
「はい、別に大丈夫ですけど」
頷く後輩に他の仕事を任せ、日向はファイルを数冊持って職員室に向かう。
(ちょっと多く持ち過ぎたかな……?)
そう思ったが、なるべく一往復で済ませたいものだ。
日向の細く短い腕ではすぐに落ちそうで、なるべく早歩きで進む。
すると、ドンッと誰かに荷物の端が当たってしまった。
「あ、ごめんなさ────」
ぶつかった相手の顔を認識した瞬間、日向の体が固まった。
「いいや?大丈夫だよ」
相手は、ぶつかった衝撃で日向の腕から落ちてしまった一冊を拾い上げると、ファイルの山にまた積み置いた。
そして日向の顔を見て、あの時のように微笑んだ。
「久しぶりだね、日向」
「……ぁ、…あ……」
突然のことで頭が回らない。
何をすればいいのか、何を言えばいいのか、さっぱり分からない。
心臓の鼓動だけが脳内で鳴り、汗が自然と湧き出て、目と目を合わせただけで、こんなにも身体全体が震えてくる。
ぱくぱくと口を動かしているだけの日向を、弘一はクスリと笑い、耳元に顔を近づけてきた。
「仕事が終わったら、指導室に来るように」
「……!!」
弘一は動かない日向から遠ざかり、その場から去って行った。
見えなくなっても、まだ体は動かない。
そして、思い出した。
弘一は、よく生徒指導担当に当てられると。
そのためには、それ専用の部屋が必要だ。
放課後の遅い時間、きっと誰も指導室なんて来ない。
また、弘一と日向と二人きり………。
「…あ………」
状況を予想しただけで体の力が抜け落ち、ばさばさとファイルが床へ散らばっていく。
(早く拾わないと……)
解っているけれど、どうしても思考と身体が停止してしまっている。
再び日向が職員室へ足を進められるのには、時間がかかった。
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