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御薬袋日向 No.18
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ノックをすると、すぐに中から「どうぞ」と聞こえてきた。
「失礼、します……」
日向は部屋に入ってはいけない、このドアを開けてはいけないということをよく知っている。
けれど、行きたくないという気持ちに反して体は動いてしまう。
ガラガラと扉を開け、部屋の中へと入る。
自分の足が小さく震えているのが分かった。
「………………」
中には、奥に弘一のデスクがあり、それ以外は向かい合わせに置いてあるソファぐらいであった。
指導室なんて来たことがない日向は、殺風景な部屋だなと思えた。
だが、今はそんな呑気なことなど考えている場合ではない。
デスクの椅子に座っていた弘一は、日向が部屋の扉を閉めるのを確認すると立ち上がり、日向にゆっくりと近づいてきた。
「見ない間に、少し背が伸びたかな?いや……、そうでもないか」
弘一が一歩一歩、近づいてくる度に身体の震えが増す。
「僕は、ここ最近ずっと日向のことを考えてたよ。次はいつ会えるのか、楽しみにしてた」
誰か、誰でもいい。
とにかく、早く。
「君がどこの高校に入ったのか知らなかったから、さっき君を見つけた時、すごく驚いたんだ」
早く、早く早く……。
(助けて……っ)
そんな日向の願いなど、ここでは誰にも届くはずがなく、気がつけば弘一は目の前に立っていた。
「同時に、すごく嬉しかったよ」
「………………」
───ああ、もう、逃げられない。
日向は何故か、そんな気がしてしまった。
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