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御薬袋日向 No.22
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黙り込んでいる日向に、舌打ちが聞こえてきた。
「何だよっ、最近顔見せなくなったと思えば、俺に隠れて浮気でもしてたのか!?それとも他に理由があんなら、何とか言ってくれよ!」
(………ッ!)
怒りと悔しさと、どこか悲しさを含んでいるように聞こえるのは、自分の勘違いだろうか。
(………………)
きっと、勘違いだろう。だって、こんなに怒っている千彰は今まで見たことがない。
「千彰は……知らなくていいよ………」
そう言って日向は千彰を押し返し、部屋を飛び出した。
知らなくていい……。
そうじゃない、自分が知られたくなかっただけだ。
日向は学校の寮から走り出るが、千彰が追いかけてくる気配はない。
(追いかけてきてほしかったのに………)
そんな本音が心の中で呟かれる。
追いかけてこないということは、やはり愛想を尽かされてしまったのだろうか。
「結局、自分勝手なだけじゃん……」
嫌われたくないから、何も言わない。
だから、必死に逃げ回る。
けれど捕まって知られてしまえば、助けてほしくなる。
知られたくなかったくせに。
何も言わずに、嘘を吐いていたくせに。
────何て自分は汚い人間なんだろう。
千彰が追ってこないのも、理解できてしまう。
(でも………でも……っ)
「助けて……っ、千彰………」
覚悟をする前に、言わせてほしかった。
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