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御薬袋日向 No.25
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「日向?」
ザクッ、と草を踏む音が聞こえ、その方向へ目を向ける。
建物の角から出てきたのは、日向の心を悩ます彼だった。
「ち……、ちあ……」
名前を呼びたくても、声が掠れて上手く言えない。
千彰は弘一に押さえられている日向と目が合った瞬間、驚きからか、怒りからか、悲しみからか分からないが、大きく目を見開き表情を変えた。
弘一は相変わらず笑みを浮かべたまま、日向から顔を離した。
「君が、日向の『千彰』君?」
「……っ」
余裕を含んだ言い様に、千彰の顔が深く歪む。
構わず、弘一は続けた。
「悪いけど、君は今は邪魔かな。日向は君を諦めてたようだけど……違うのかい?」
「………違う」
きっぱりと言い切る千彰に、日向の中に希望が生まれる。
否定してくれた。
でも、違わないはず。日向は逃げてきてしまったのだ。
本当に、最近の自分は失態ばかりしている。
いや、いつもそうだ。
それで自信がなくて、千彰に嫌われそうで怖くなったのだ。
自分に自信がないせいで……。こうやって、千彰に情けない姿を見せてしまっている。
「………………」
こんな恥ずかしいものを見せるくらいなら、このままどこかへ消えてしまいたくなる。
日向の心情とは裏腹に、千彰は日向に歩み寄ってきた。
その顔は先ほどより、はっきりと怒りの色に染められている。
千彰は近くに来ると、勢いよく横暴に、日向から弘一を引き剥がした。
「……ッ」
弘一はバランスを崩しかけたが、すぐ後ろに足をついて倒れるのを防いだ。
「……わッ!?」
そして弘一に構わずに、日向を力強く抱きしめた。
しかし、すぐに弘一の方に振り返り、弘一を鋭く睨みつけた。
「……テメエ、よくも日向を泣かせやがったな」
「泣かせたくて、泣かしているわけじゃない。君達だって、喧嘩する時もあるだろう?」
弘一は千彰の怒りように驚いていたようだが、まだ余裕があるのか笑顔のままだった。
「あいにく、そういうのは俺達の間じゃ、ねえんだよ。言っとくけどな、日向のは全部俺のモンなんだから、勝手に手を出されたら困るんだよ」
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