アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
御薬袋日向 No.26
-
「全部?」
ピクリと、弘一の眉が動いた。
日向はそれに、何だか嫌な予感がした。
「そうか……。君は僕と日向の仲を知らないんだね」
「……!や、先生!ダメ……っ!」
悪い予感が当たってしまったと思い、咄嗟に弘一を止めようと叫んだ。
しかし日向の願いを弘一が叶えてくれることなど、今まで一度も無かった。
弘一は日向の声を無視して、そのまま喋り出した。
「日向を初めて抱いたのは自分だと思っているだろうけど、君じゃない。僕だよ」
「……っ!!」
言われて……しまった。
これ以上、何も知られたくなかったというのに。
一番、バレてはいけなかったことが。千彰に知られてしまった。
「全部、と言ったけど、完全にではないよ。一体、君は日向の何を知っているんだい?僕は日向が幼い頃から面倒を見ている。家族でも親戚でもない君が、日向の何を庇おうと言うんだい?」
(どうしよう……っ!)
どうしよう、どうしよう、どうしよう……。
やっと助けに来てくれたと思ったのに。また、逃げなければならないのか。
弘一は千彰を遠ざけようとしている。
きっと、先ほど言っていたことは嘘ではなかったのだろうと分かる。
日向が異常な不安感に苛まれている(さいなまれている)と、千彰に腰を引き寄せられた。
「───そんなの、関係ねーよ」
思わず千彰を見上げると、厳しい表情をしているが、何事にも揺るぐことのない真っ直ぐとした瞳で弘一に向き合っている。
そんな勇ましい千彰の姿は見たことがなく、日向はそんなことをしている場合ではないにも関わらず、千彰に見惚れてしまった。
「お前が日向の何を奪ってようと、今の俺には関係ねえ。俺の言ってる全部は、今の日向の全部なんだよ。誰が何と言おうと、こいつは俺のモンだ」
(……千彰っ!)
その言葉を、何よりもまず待ち望んでいた。
嬉し涙が日向の視界を滲ませてくる。
「いいのか?日向の身体は、僕のものになっていたとしても?」
「大事なのは、どっちが早く身体を取ることなんかじゃねえよ。どっちが早くこいつの心を取るかだ」
そう言い返した千彰は、突然日向の体を抱きかかえた。
「うわっ!?ちょ、千彰ッ!」
慌てて首に掴まるが、暴れても千彰は下ろしてくれない。
「俺達、早退すっから。そういう事にしとけよ」
「えっ?な、何言ってんの!?」
突拍子もない事を言う千彰の意図が分からず、日向は脚をばたつかせる。
だが、体全体が不安定になりそうになって、そのうち静かになっていった。
「────いいだろう」
去り際に、そんな弘一の声が聞こえてきた気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
66 / 301