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豊富悠也 No.22
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しばらく下品に笑い飛ばす不良達を悠也が眺めていると、突然ホイッスルが辺りに響いた。
「そこーーー!何たまってんのーーッ!」
ドスの効いた声で叫ぶほうを見ると、笛を首からぶら下げた、悠也と同じクラスの女子生徒、鷹田直樹が仁王立ちで不良達を睨みつけていた。
「直樹ちゃん、お疲れ様だなぁ。ああやって、たまってる不良の人達を追い払ってくれるんだよ」
「へ、へえ…」
そう言われれば、直樹も生徒会委員だった。
直樹は大股で不良達のほうへ近づいていく。
不良達は面倒臭そうにその場からわらわらと解散していく。
直樹がその場に着いた時には一人も残ってなかったが、まだ微かに見える後ろ背に、直樹は精一杯の声で叫んだ。
「今度来たときはグーパンだからな!そのことよく覚えといてから、また来やがれッ、この格好つけだけの不良共がッ!」
「う、わー…」
あまりの迫力に、悠也は息を飲んだ。
直樹がもともと男らしい性格なのは知っていたが、さすがにあそこまでとは悠也も思っていなかった。
直樹は踵を返し、また校舎のほうへ向かおうとしたとき、ちょうど悠也達に気がついた。
日向が軽く手を振ると、こちらへ歩いてくる。
「直樹ちゃん、お疲れ様」
「今日も凄かったなー」
日向と千彰が笑いながら、それぞれのことを言うと、直樹はふん、と鼻を鳴らして納得いかないという顔をした。
「あれぐらい、当然です。でもあいつら、また来ますよ。あたしをどれだけ叫ばせるんだか、気が知れません。今のトコ、被害者が出てないのはいいんですが…」
「まあまあ、直樹ちゃんが居てくれれば、それだけであの人達は逃げてくれるから助かるよ。いつも、ありがとね」
日向が礼を言うと、直樹は得意そうな笑顔を見せた。
「いえいえ、またあいつらがたまってたら、言って下さい。予告通り、次は殴り飛ばしますから」
さらりと告げる言葉に、不穏な単語があったと思うのは、自分の気のせいか。
悠也は改めて男らしい直樹を心の中で、密かに尊敬した。
「あ……、ごめん、千彰。もう行かなきゃ」
「え、もう?」
千彰の隣から立ち上がる日向に、千彰は不満そうな表情だ。
「まだ10分ぐらいじゃねーかよ」
「うん。……でも千彰も部活あるでしょ?」
「先輩、何か用事ですか?今日って、生徒会ありましたっけ?」
気遣ったのか直樹がそう言うと、日向は曖昧に頷いた。
「えっと……学校に戻ってやらなきゃいけないことがあって………」
そうはにかむような笑みを浮かべて、日向ははっきりとしない態度でその場から離れて行く。
「日向ー、今度また時間取れよー?」
「うん〜………」
背中に叫ぶ千彰にも、弱々しい返事が返ってくる。
その様子に、千彰も悠也も直樹も首を傾げた。
「御薬袋先輩、何かあったの?」
堪らず千彰に聞くと、千彰も微妙な顔をしていた。
「ん〜、何か最近素っ気ないんだよなあ?俺、何かしたっけな〜?」
「しつこいんじゃねえ?」
「やめろよー、そういう冗談は今言うなよぉ」
珍しく元気のない千彰を、悠也は面白がって笑っていた。
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