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豊富悠也 No.27
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玄関へ向かって歩いている─────と……。
「……っと、うわぁ!?」
「えっ、ちょ、うぎゃ……!」
千彰の小さい悲鳴に悠也が振り返ったと同時に視界が暗くなり、重いものが悠也の上に倒れ込んできた。
それが千彰だということに気がついた時には、悠也もその重さに耐えきれずに、床に押し倒されていた。
後頭部をさすりながら体の上にのしかかっている千彰を睨み上げると、千彰も顔を上げ、その目と合った。
「い……ったぁ…。おい、加藤!何してんだよっ」
「悪ぃ悪ぃ。ちょっと転んで……って、うわ!?こう見ると何か床ドンしてるみてぇ!」
「はあ!?何だよそれ、気持ち悪ぃ。つか、重い!暑い!!」
冗談を言いながら笑う千彰につられ、悠也も千彰の胸を押し返しながらも笑ってしまう。
しかし、こうしていると、本当に千彰が悠也を襲い倒したように思える。
「でもさー、こういうのってえ、誰かに見られたりしてフリーズして勘違いされたりとか───」
ふざけながら話す千彰の言葉が、途中で途切れた。
「……加藤?んだよ、早く退けって────」
不思議に思い、顔を見上げると、千彰も顔を上げ、玄関のほうを向いている。
悠也も上半身を起こし、千彰の視線を追って見てみると…。
玄関の扉を半分開けて顔を覗かせていた東が、仁王立ちの状態でこちらを見ている。
その表情からは、とても言い表せないような怒りの意味が込められていたが、それとは裏腹に、悠也の顔色は真っ青に変わっていった。
(ヤバイ……、さっきの体勢は絶対誤解されてる……っ!)
「……!!」
何か声を掛けなければと思うが、うまく声が出ずに口をぱくぱくと動かしていると、東もやがて乱暴に扉を閉め、足音を廊下に響かせながら去って行ってしまった。
呆然と見送っていると……。
「行けよ、ほら」
「え!?いや、だって……」
「ちゃんと自分の考え、言えるかもしんねーじゃん」
「はぁ!?ち、ちがっ……!あれは俺じゃなくて!友達の……!」
「ハイハイ、『友達』ね。友達。じゃあ、その友達のことも言っといてやれよ。話せば解ってくれるって」
「……っ」
そうだ、これがきっかけで東と話が出来るし、今がよりを戻すチャンスかもしれない。
千彰の言い方が癪だが、今はしょうがない。
悠也は急いで靴を履き、東を追いかけるため、千彰の部屋をあとにした。
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