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豊富悠也 No.33
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「ふ~、終わった~…」
数時間ぶりに帰った部屋に着き、悠也は安堵の息をついた。
すぐさま床に寝転がり、ごろごろと転がる。
「おい、ほこり付く。邪魔」
東に文句を言われても、悠也はよくこんな風に床に寝転がるのが好きなので、そう簡単にやめられるはずがなかった。
悠也の頬には湿布が貼り付けられていた。
その後東と教師達に現場状況の説明やらお詫びやらの話をし、さらに明日もまた詳しい話を取り調べられることになったのだ。
堅苦しいことが苦手な悠也にとって、その時間は地獄のような時間だった。
「あ~、校長、俺の親に言うのかな~?言わなくてもいいって言ったんだけどな~…」
独り言のように呟いた言葉だったが、その返事は返ってくることがなく、部屋は沈黙に包まれた。
「……………」
「……………」
(まただ…、この空気)
「……………」
「……………」
(もう、やだ……)
沈黙に耐えきれず、部屋を出ようと悠也が立ち上がろうとした途端、東の声が上から降ってきた。
「……なあ」
「ん?」
「……俺達ってさぁ、こうなる前って…、どういう話してたんだっけ?」
「……………」
東の問いに、悠也は思わず考え込んでしまった。
そして、気付いてしまった。
思い、出せない……。
「何の、話だったっけ……?」
聞き返すと、また沈黙になってしまった。
どうして?
そんな過去の事じゃないのに、どうして覚えてないんだろう。
印象に残る話題など、なかったのだろうか。盛り上がった会話は少なくないはずないのに。
「………勉強の話とか、かな?」
「勉強?」
ふと思ったことを口にすると、怪訝な声音が返ってきた。
「ほら、お前がよく勉強見てくれたじゃん。だから、勉強の話とか、授業のこととか………」
「……それだけじゃないだろ」
「……………」
確かに、それだけじゃない。
それだけじゃない話題が、たくさんあった。あったのは覚えてる。
なのに、どうしてその内容は思い出せないのか。
悠也は頭を抱え込んでしまった。
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