アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
25 力があるとは?1
-
side________
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「________は生きて。生きて、あなたが愛する者の為に生きなさい。」
そんな言葉をどこかで聞いた気がする。
たぶん、雨が降ってたと思う。雨が降っていて、外の庭を眺めていた気がする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
まどろみから覚める。
いつもの癖で自分がどこにいるのか気配を探る。
「え?…………どこ?」
いつもと確実に気配が違う。
それに、思い返してみれば自分は義父に落とされたはずだ。
なのに何でここにいるの?それにここどこ?誰もいないの?
…………あ。扉の向こう人の気配がする。
1、2、3人?
二人は大人だ。もう1人は大きい子供?
扉を開けて入ってくる。
「あ、あのぉ。」
誰かわからない人に話しかけるなんて怖くて語尾が小さくなってしまった。
でも、触れないとここがどこだかわからない。
子供の気配が徐々に僕に近づいてくる。
そっと僕の指を握り混むとさっきまで見えなかった景色が一気に流れ込んでくる。
土で出来た小さな部屋に僕がいることがわかった。
母親と、兄だろう僕に触れている女の子より大きな男の人がいた。
はだが黒く、痩せこけているようにも見えた。
『大丈夫?』
手を伝って流れてきた言葉に僕は頷いた。
「あの。ここはどこですか?」
『え?』
少女は心底驚いたように僕の顔を覗きこんだ。
「ーーーーー。」
兄だろう男の人がなにかしゃべっている様子はわかるが、何を言っているのかわからない。
「ご、ごめんなさい。耳が聞こえなくて。」
『え?』
また、少女は驚いたように僕の顔を覗きこんだ。
『何で?私と話せてるじゃん。』
「ごめんなさい。え、えっと。僕は触れてないと耳も聞こえないし目も見えないんだ。だから、触れてしゃべってほしい」
『そ、なんだ。わかった。』
目の前の少女が泣きそうな顔をしている。
兄だろう男の人が僕に近づいてきて僕が使っているベットの足下に来てソッと僕に触れた。
『これなら聞こえるか?』
僕は頷いて、男の人を見る。
『ここは、ソーニョという国だ。俺はラウ。ラウ-ジーナだ。ラウと呼んでくれ。
君は自分のことがわかるか?なぜ、あそこにいたか。』
なぜ、あそこにいたか…………自分はどこにいたの?
「わからない。」
母親だろう人が僕を心配そうに見つめている。
「ぼ…僕は、どこにいたんですか?
僕は何でここにいるんですか?
僕は…何で生きてるんですか?」
僕は自分の事をほとんど知らないことに気づいた。
あの日死んだはずの僕がなぜここにいるのかすら知らない。
『落ち着いて。まずは君の名前を教えてくれる?
君なんて失礼な呼び方はしたくないからね。』
本心なんだろう。邪心や、憎悪など人間の言葉と裏腹に腹に隠された言葉がこの男の人からは伺えなかった。
「…………。」
答えたい気持ちはあるが、自分の名前がわからない。
自分の名前を言いたくても無いものはどうすることもできない。
「……。ないんです。名前。」
『え?』
また、少女が驚いたのはわかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 60