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㉖ 力があるとは?2
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『そっか。なら、名前をつけないとね。』
少女とは裏腹に男の人は僕の頭をなでながらそう言った。
伝わってくる手からはいくつかの名前が上がっては消え、上がっては消えていた。
『フフ。ラウ、ちゃんとこの子にあった名前をつけさせてもらいなさいね。名は体を表すと言うでしょ。』
いつの間にか背中を擦ってくれていた母親が落ち着いた口調でラウさんに言う。
『わかってるよ。母さん。メアも一緒に考えてくれるかい』
今だ、驚きを隠せない少女にラウさんが話しかける。
『……あ!うん!うん!私も考える!』
元気にそう答え、僕をギュっと抱きしめた。
幼い少女だと思っていた少女は、自分よりも幾分か大きいことに気づいた。
そう思って、兄のラウや母親を見てみると僕が思う大人の平均基準を大幅に上まることに驚いた。
『ん?どうした?』
「なんか、…大きいなって」
『あぁ、確かに。……小さいね』
小さいって。そう言いながら、僕の頭を撫でる。
『ねぇねぇねぇ!自己紹介しようよ!』
有無を言わさない勢いで少女からすることになった。
『私はね!メア!ラウ兄ぃの妹!今年で10歳!
好きなものはー、水かな!ここではね雨はほとんど降らないから水って高価な物なの!だから、昔初めて飲んだとき感動しちゃった!また飲みたいな!』
「え?……何歳って?」
『10歳!!』
驚いた。10歳で170センチほどあるものなのか?メアちゃんが嘘をついているようには見えないし。気配だって幼い。
信じがたいが実際そうなのだろう。僕が思うものとは確実に違うのだから。
『はい!こんな感じでいいから、ラウ兄ぃも!』
元気よく、ラウさんの背中を叩いてラウさんが咽ていたが、メアちゃんにとったら日常なのだろう。
『んまぁ。さっきも言ったけど。俺はラウ。メアの兄で今は休暇中だけど王の家臣してる。
好きなものは。うーん。あぁー。えー。
ガナっていう果実かな。まぁ、嫌いなやつはいないと思うけど。はい。終わり。』
ラウさんすごいなぁ。王ってやっぱり凄い人でしょう。その人を守るなんて凄いなぁ。
ガナってなんだろう。皆が好きなものって何だか凄いな。
『じゃぁ、流れ的に私かしら?私は、ラウとメアの母親のミナです。昔王家のメイドをしてたのだけれど病気になってやめちゃったわ。夫は、同じ病気で亡くなったわ。
好きなものはメアとおんなじ。水が好きよ。』
ニコッと花が散るみたいに笑う母親のミナ。儚く笑う母親からは、
もう時期枯れてしまいそうな花が一輪
その横には枯れてしまった花が並んでいるイメージが流れ込んできた。
そのイメージが脳裏に強く焼き付いた。
「あ。あの、えっと。……ミナ…さんの病気って治るものなんですか?」
聞いてはいけないことだとわかっていても聞かずにはいられなかった。
皆が悲しい顔をしたから、その病気は治らないのだろう。
こんな、心優しい人が。見知らぬ僕を助けてくれる。そんな人の命の花が枯れようとしてるのかがわからない。
視界がぼやけていく。ミナさんたちが一番辛いはずなのに。自分が先に泣いてはいけないはずなのに。
「……ごごめんな……さい。」
泣いてしまうこと。
自分に力がないこと。
ごめんなさい
「ごめ…んなさい。………っ。」
『何で、あなたが泣くの?あなたのせいでも何でも無いのよ。これが、運命だったって事』
諦めたような言葉。
そんな運命おかしい。
「……っ」
『大丈夫よ。大丈夫。もうやりたい事、やり残したことはもう無いよ。あとは時間が立つのを待つだけ。後悔なんてしてないわ』
ミナさんの手が僕の背中を撫でる。
また。あの花のイメージが流れてきて、
それと一緒に独りぼっちの小さな花が泣いていることに気づいた。
あぁ。あれはメアなんだろう。
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