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㉙ 力があるとは?5
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力があると言われても、
そんなの知らないし今までだってそんな力があったらどれだけ楽に生きてこれたか。
もし、力があったとしてその力が今役に立つとは限らない。
もしかすると、何かを破壊する力かもしれないし。
もしかすると、どっかに飛んでいく力かもしれない。
でも、僕は。
わからない土地に来て。
外には出たことはないが
灼熱の太陽があると言っていたこの土地で僕を救ってくれて。
偏食の僕に食事を出してくれた。
水がないと言っていたのに僕の食事には水が少量だが必ずでていた。
僕に力があることが
本当だったらいいのに。
ミナさんの首を探す。
首に触れると小さくトクン、トクンとまだ生きている証がある
トクン。トクン。トクン
“ミナを助けてくれ。”
ミナさんの脈に集中していたら誰かの声が聞こえた。
ラウさんか、メアちゃんかと思いミナさんを見ていた顔を上げる。
『ルカ………?』
ラウが喋った。でも、さっきの声とは違う。
メアちゃんとラウさんはジッと僕を見つめている。
ならさっきの声は?
ミナさんの?
僕はさっきのように集中する。
“ミナを助けてくれ。こいつは悪いことなんてしてない。恥じるようなことはしていないんだ。本当にいいやつなんだよ!頼む。助けてくれ。”
ほらまた。誰かの声が聞こえる。
花が、枯れていっている。
足元で枯れた花。
それをよく見ると今枯れていく花に守るように巻き付いている。
『さっきの声は貴方ですか?』
“助けてくれ。頼む。誰でもいい。なんでもいい。助けてくれ。”
頭の中に流れてくるイメージに話しかけるが、
これは一方通行だということに気がついた。
枯れた花はミナさんの夫。
枯れかけていく花はミナさん。
そう気づいたとき、薄っすらと見えてくる人間の影。
まるで、寄り添うように。守るようにと支え合い抱きしめている。
助けたい。
こんなにも素敵な人が消えるなんて考えたくない。
「……。…っ……死なないで」
いつの間にか流れていく涙はミナさんの顔に落ちていく。
「死なないで。……死なないで!」
運命だと、ミナさんは言った。
でも、こんな運命いらない。
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