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56 独りは怖いから1
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昔見た月が綺麗だった。
今の真っ暗で、何も聞こえないことは……怖い。
いつ義父が来てもいいように神経を張り詰めて、気配を探る。
探った気配が近づいてくると、ここの小さな押し入れの扉があく。
そして……痛くて、熱くて苦しいどれかが待っている。
もっと前はくらいところが好きだった気がする。
前にずっと一緒にいた人と手を繋いで夜空を見るのが好きだった。
物知りなあの人にたくさんの星の名前を教えて貰った気がする。今では、どんなふうだった、どう輝いていたのかは忘れてしまったけれど。
その人が指さす先はとても綺麗だった気がする。
「ーーあの星はね、不思議な話があるんだよ!」
「おはなしぃ?」
舌足らずな小さな子がとても興味のある顔であの人を見つめている。
聞いた話はとても悲しかった。
とても悲しくて、寂しかった。
「かなしいおはなしぃ。1年に1回しかあえないのはぼくはいやだなぁ…」
「そうだね。僕も嫌だよ。嫌だからお願いするんだ。僕達は離れませんようにって。その2人に願い事を書くんだよ。ーーはその2人になんて願いたい?」
みんなは短冊に願いを書いて飾るのだと言った。
あの人はとても優しく手を握り笑っていた気がする。
そして僕は……
「ぼくはね。その2人のおねがいをきいてあげるよ!みんなの願いをきいてあげるその2人の願いを聞く人がいないでしょ?だからね。ぼくが聞いてあげるの。」
子供ながらの幼稚な考えだった。ただ、1番自分たちが願いを聞いてほしいんじゃないかなそう思っての発言だった。
「どうやって?」
その人は優しく微笑んで僕の頭を撫でる。
「その2人とお願いするの!かみさまおねがいですって。僕はね。神様とおはなしできないからお歌でお願いするの!」
自分が得意な歌で神様と話せるそう思っていたのかもしれない。
みんなが、僕の歌には力があると褒めてくれたから子供だったから。心の奥底から信じてる時があった。
「ーーならできるよ!だって僕の大切な[弟]なんだからね!」
弟。
僕の知らない記憶が蘇る。知らないようで知ってる義父家族のところに住む前の記憶。
そうだ。確かにその話をしたのはお兄ちゃんとだった。
なぜ僕は忘れてしまったのだろう。
さっきのさっきまでお兄ちゃんの存在が僕の頭の中に一欠片もなかった。
ただ、僕は1人でどうしてか義父のところにいてどうしてか……
あ……あれ?
なんで……なんで僕は義父のところにいたんだろ。
本当のお父さんは?お母さんは?
なんで、義父のとこに僕だけいたんだろ?
………………………………………………なんで僕1人なんだろ。
……独りは嫌だ。
……ひとりにしないで
……どこにいるの?
……ねぇ。誰か
(おにぃちゃん。どこにいるの?いつもみたいに手を繋いでよ。)
おにぃいちゃん。
どうして、お父さんとお母さんの記憶がないの?
なんで……おにぃちゃん。そばにいてよ。痛いのだって熱いのだって苦しいのだって我慢するから僕をひとりにしないで……ねぇ
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