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「……紫乃霧くん」
ビクッ!
てっきり黒髪さんに怒られると思っていたから真哉から声をかけられたのに驚いた。
「…なんですか?」
「紫乃霧くんってどこの出身?もといた高校は?」
グッと自分の手を握る。
「どうして、そんなこと聞くんですか?」
「このパソコンでこの周辺の高校生の情報はすぐ調べられるんだ。だけど……いくら調べても、紫乃霧くんの情報を調べることが出来ない。」
「それに問題でも?」
「君には不自然な点が多すぎるんだよ。この学校に特例での転入。君に対しても厳重すぎる情報セキュリティ。
それに この周辺の人ならこの学校のルールなんて皆が知ってる。それを理解した上で入学するんだから。」
「髪色のルールを知らないのはおかしいと?」
「そう。それはこの学校の一番基本的なルールなんだから。」
真哉はメガネを押し上げ俺を見つめる。
「紫乃霧くんの特例の秘密を俺は知りたいな」
特例の秘密……
「そんな秘密、俺が知りたい。」
「どういうこと……?」
「特例の理由も厳重すぎるセキュリティも、俺は何一つ知らないってこと。受かった理由だって俺が聞きたい。紙に出身校と名前を書いただけで受かりましたよ。」
「その出身校は?」
「なんで言わなきゃならないんですか」
「言わないなら君を退学させる必要がある。」
は?何を言っているんだ!?
彼を睨みつけ真意を探る。
真剣な顔をしている彼。
冗談では言っていないとわかる彼の瞳の色。
「……どうしてそこまで知りたがるんですか?」
彼は困ったように笑う。
「この学校を敵視する輩は多いんだよ。危険分子は取り除かなきゃいけないんだ。」
言いたくない。だが、これ以上あの人に迷惑をかけられないのも事実。
この転校の件でも相当な迷惑をかけたはず。
「……桜蘭付属高校」
一瞬、空気が凍る。
シーンとなったこの部屋。
しかしその静けさもすぐ終わり賑やかなものに変わる。
「……はぁ!?お前っ!桜蘭付属といったら!」
「全国一の金持ち学校だろ!!」
「いいとこのご子息だけしか通えなくて、授業も特殊だとか……!!」
「確か……授業には乗馬も弓道とかもあるんだよね!?」
"桜蘭付属"は小学から大学までのエスカレーター式で、学力、家の資産などが規定値以上でなくては入れない 国内で一番有名なところであった。
「お前何でこんなところに来た?」
周りが騒いでる中1人冷静に話しかけてきた。
「関東に引越しで来たのにそのまま関西の学校に通えるわけないだろ。」
「でもここじゃなくてもよかっただろ?近くには進学校だってちゃんとあるんだから。」
「パンフレット見ただけじゃ不良校だって気付かなかったんだよ。」
「桜蘭に通わせてる親なら、下調べくらいするだろ」
「その親が"好きなところでいい"って言ったんだよ。」
彼のすべての質問にぶっきらぼうに答える。
持ってきてくれた高校のパンフレット。
沢山ある中でここを選んだのは俺だ。
「ここにした理由はなんだ?」
やっぱり聞かれるか。
わかっていたが口に出したくない。
「…答えろ」
有無を言わさない漆黒の瞳に囚われる。
「……たから」
ボソボソッと言う。
「あ"?聞こえねぇよ。」
はぁ…とため息をつき、
次はしっかりとした口調で答える。
「見せられた高校の中で名前が1番好きになったからだよ。」
本当にくだらない理由。
"清水"と言う名は俺を綺麗な水の中に同化させてくれると思った。
ただそれだけ。
そして周りの反応は……
"唖然"
今日だけで何度その表情を見たことか。
しかし、そんな中で
「……ぶはっ!ははは!お前っ!そんな理由で選ぶなよ……っ!」
とっても楽しそうに笑う伊織。
確かに馬鹿みたいな選び方をしたとは思う。
だが、もう何も知らない人間に自分の事を話したくはない。
まして、自己紹介や出身校の話なんてする気もなかったし、したくもなかった。
これ以上この人達と関わりたくない。
そう願ったのに……
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