アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
「士郎」
低く艶のある声。
その声を聞くといつもにやけてしまいそうになる。
「どうしたんだ隆貴。」
なるべく顔を引き締めいつもどおりに応える。
「聞いて!!また男に告られた!!男が男に告るとかありえない。」
整った顔を心底嫌そうに歪め、ため息を吐くようにうんざりしながら言う。
「はははそうだね。」
乾いた笑み聞き付いてしまっただろうか。
心配になって顔を上げる。
隆貴は相変わらず、嫌そうな顔をしている。
良かった気ずられてないみたいだ。
「やっぱ士郎にだけだな。こんな相談できるの。お前が親友で良かったよ」
打って変わっての心底嬉しそうな顔。
思わず顔がほてりそうになったが
ーーーそうだ、俺達は親友だ。
親友なのに顔が赤くなるのはおかしい。
俺はなんとか表情に出ないようにした。
でもそれも裏切りになるのか?
俺は心で抑えているはずの心がちくりといたんだ気がした。
「・・・・おれもだよ」
さしあたりのない返事。
「・・・・どうした?士郎?」
表情に出すまいとしていたから顔がこわばってしまったんだろう。
心配そうに俺の顔を覗きこみ片手で頬を撫でようとする。
ーーーやばい
パシリととっさに隆貴の手を振り払ってしまった。
「士郎?」
愛も変わらず心配そうな顔。
でも、俺は正直それどころじゃない。
心に余裕がないのはもちろんのこと
あたりから視線がチクチク刺さる。
まあいつものことだ。
見た目麗しい隆貴と平凡な俺。
どんな角度から見ても吊り合わない俺達。
隆貴には黄色い視線。
俺にはどす黒い視線。
「なんでこんな平凡が水俣さんと付き合ってんの。」
「図々しんだよ。」
「平凡のくせに」
そんな声がヒソヒソと聞こえてくる。
これもいつものこと。
でも、言われ慣れているはずの言葉にも毎回毎回、傷ついている自分がいる。
付き合ってるのは誤解だけど。
あいつは多分女の子のほうが好きだし。
男子高に入って隆貴との付き合いは減ってしまった。
まあ、俺があまり学校では合わないようにしているからなんだけど。
かわいい男の子たちの嫉妬に巻き込まれるのも無論嫌だったけど一番の理由は一緒にいるとこの気持ちがいつかバレてしまうんじゃないかと恐れているからだ。
そんなわけで朝一緒に行くことも、お昼を一緒にたべることも、帰り一緒に帰ることも、放課後遊ぶこともない。
今はこうした空き時間に少し話をする程度の関係だ。
だから隆貴の恋愛事情は知らない。
「どっかいけよ地味男」
「じゃ、じゃあ、ね、俺、谷口と昼飯空約束してるから」
隆貴に気づかれないようにその言葉を自分の言葉にかぶせるようにする癖は随分前についてしまった。
弁当の包の結び目を持ち、隆貴の静止の声も聞こえないふりをして教室を出る。
最近こんなふうに隆貴を避ける行動もとるようにもなってしまった。
自分の教室から少し離れた廊下でため息をついた。
「おれ、何やってんだろ。」
谷口とは高校からの友達ではあるが今日はあいにく彼女と昼飯を食べている。
俺は誰にも見つからないように普段使われていない埃っぽい空き教室の隅で壁をせにして弁当を食べる。
あまり味がしないそれに再びため息を吐いたのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 14