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…
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部屋に入るとそこには30代くらいの男性と俺より少し年下に見える二人の少年がソファーに座って楽しそうに話していた。
少年の一人は赤毛でチャラそうな感じで、もう一人は栗毛で女の子みたいに小柄な可愛い顔立ちだった。
話しているところに俺が入ってきたせいで、一瞬空気が止まる。
「あっ、…えっとこんにちは…俺一ノ瀬 司と言います。」
俺は少し気まずくなった。何となく名乗ってみた。
「やぁ、君が司くん!やっぱり写真で見るより実物の方は何倍もカッコイイね‼︎」
30代くらいの男性が営業スマイルをしてそう言ってきた。多分…今回の企画を考えた、事務所の人だろう。
…何てことを考えていたら、思いっきり扉が開き、入り口の前に立っていた俺の背中に直撃する。
「っっ‼︎痛っ!」
…結構痛かった。俺は背中を抑える。
勢いよく扉を開けて入って来たのは、声変わり前の少年の声をしていた。
少年は、
「すみませんっ!色々あって遅れましたぁ‼︎
…わぁ、人が居た‼︎扉にぶつかりました⁉︎
痛くしませんでしたか?本当にすみません‼︎」
直撃した背中を抑えた俺に深々と頭を下げて謝ってきた。様子を見ていた周りからは、心配そうにする声やその光景を見て笑っている奴もいた。
俺は少し眉間にしわを寄せて、ゆっくり少年の方を振り返って見てみる。
その少年も顔を起き上がらせ正面を向く。お互いのタイミングが丁度合った。
『あっ…』
俺とその少年は同時にハモった。
そこに居たのはさっき洋館の外で会った西園寺 洸だった。
「あれ、一ノ瀬 司さんだよね⁉︎また会えて嬉しいです!先ほどは本当に助かりました。
おかげで鼻血も止まりました!」
洸は俺にまた会えて嬉しそうにしている。そして、鼻に丸めて詰め込んでいたティッシュを取って、鼻血が止まったことを見せてくる。
「あぁ、良かったですね…」
俺は苦笑いで答えた。
「はいっ‼︎……あの、背中大丈夫ですか?本当にすみません」
洸は心配そうに見てくる。
「司くん大丈夫?洸くん扉を開ける時は気をつけてね。
コホンッ…えーでは気を取り名をして…
これでメンバーが揃ったのでまず自己紹介をしてもらいたいと思います。ではまず洸くんから…」
企画事務所員がそう言い、洸から指名された。
「ははっい‼︎
おっ俺の名前は西園寺 洸ですと申します‼︎
年は14歳で中学二年生です。
えーっと…好きな食べ物は猫で、嫌いな食べ物は掃除機でます‼︎…えっと…その…あの…」
顔を赤面させながら自己紹介をしている。
…最後の語尾が変だし、訳のわからないことを言っていた。
洸は頭の中が真っ白で、物凄く緊張しているようだった。
ブハッ
「あははは!もう限界、ちょー面白い!あんたサイコー‼︎おもろいわ〜あははは(笑)」
チャラそうな少年がいきなり吹き出し、腹を抱えながらバカ笑いをしてきた。
「コラコラ、海斗くんそんなに笑ったらダメだよ…」
企画事務所員の人がその少年を注意する。
「あはは、あーすみません〜
じゃあ次は俺の番ね!
俺の名前は本郷 海斗‼︎年は14歳中学二年生で〜す‼︎
趣味は合コンとカラオケ、あと女の子が大好きです!タイプで言うならえっと……あっ洸を女にしたバージョンっす!
暇な時皆んなで一緒に遊ぼうぜぇ!
海斗って呼んでね!
よろしく、あっ後でLINE交換しよ!」
そして指名されてもいないのに勝手に自己紹介をしてくる。満面の笑みを浮かべ、まるで合コンで挨拶するような感じだった。
好きなタイプと言われ洸は俯き赤面していた。
最近風なチャラい男だ…
この時俺はこいつとは絶対気が合わないと思った。
「では次は、秋くんね」
企画事務所員の人は次に可愛い顔立ちの少年を指名した。
「えー僕からですかぁ?
今の人の後にやると僕の印象が薄くなっちゃうんで、そっちの背中痛めたお兄さんからやってよ〜
華がある僕は最後ね❤︎」
指名された少年は文句をたれて最後にウィンクをしてくる。顔は可愛いが我儘そうな奴だなと俺は思った。
「仕方がないなぁ…じゃあ、司くんからお願いします。」
企画事務所員の人が文句をたれた少年の言う通りに俺を指名してくる。
「あっはい。名前は一ノ瀬 司です。年は15歳で中学三年です。
趣味とか特にありません。精一杯頑張るのでよろしくお願いします。」
俺は素っ気なく答え頭を軽く下げる。
「えっそれでおわりぃ?
じゃあ次は僕の番だね❤︎
僕の名前は…………鮫島 秋雄……。
えへへ、秋って呼んでね!
年は13歳で中学一年生、この中だったら僕が一番年下だね!
ちなみにこの帽子はトレードマークでーす!可愛いでしょ!
あとあとスウィーツがとても大好きです!特にケーキ‼︎よろしくお願いします!」
名前の部分だけボソッと呟き、秋という単語しか聞き取れなかった。とりあえずそこには触れないでおこう…。
「はい、では次は今のままでもいいけど自分の芸名を決めてもらいたいと思います!」
企画事務所員の人がそう言った。
「はい!俺は山口 海斗!ちょー覚えやすいだろ‼︎」
いち早く海斗が答えた。
「僕は宇佐美 秋…すっごく可愛いでしょ!」
秋は自信満々で答える。
「僕は…如月 洸…です。」
洸は遠慮しながら答えた。
「なんだよその名前ーちょーカッコいいじゃん!俺によこせ‼︎俺が如月 海斗に決定〜!あはは…」
海斗が洸の名前を横取りしてきた。
「えっダメだよ、俺は二月生まれだから付けたんだから…海斗は何月生まれ?」
洸は自分の考えた名前がとられると思って、慌てて海斗に問う。
「うっ…俺は…六月……。
っ六月ってカッコいい呼び方でなんていうんだいっ‼︎俺もそれにする!」
海斗は言葉に詰まらせた。そして逆切れのように自分の月の事を聞いてきた。
「水無月だよ…でもダメだよ海斗くん、名前をパクっては…」
企画事務所員の人は海斗に注意した。
「はいはい…山口でいいですよ〜だ!ふん!」
海斗は口を尖らせて文句をたれた。
「司くんは何するの?」
企画事務所員の人が俺に尋ねた。
「…鷹瀬 司で…」
俺は何も考えていなかったので親の名前を一字使った名前にした。
「むむっ!それもまたまたカッコいい!名前の由来なんだぁ?」
海斗がまたしてもつっかかってきた。
「…。」
俺は離婚した親の名前を使ったなんて言えないよなと悩み無言になる。
「海斗くんいい加減にしなさい。」
そこで企画事務所員の人は海斗を注意した。
俺はその時助かったと思った。
「へいへい」
海斗は残念そうに返事をした。
「はい、ではみんな名前を決めたところでこのグループ名を発表したいと思います!
グループ名は、『HIKARI』です。
光とつけたのは、他にもいろんなアイドルグループがいる中で一番に輝いてもらいたいという思いでつけました!異論はありますか?」
企画事務所員の人がそう言った。
「何それ〜めっさカッコえぇじゃん‼︎俺にぴったりのだな!」
海斗がそう言って賛成した。
「うん、僕にぴったりの名前❤︎」
秋は目を輝かせながら賛成した。
「何か…カッコいいです…。俺もそれでいいと思います…。」
洸も遠慮しながら賛成をした。
「司くんはどう思う?」
何も言わなかった俺に企画事務所員の人が尋ねる。
「…それでいいと思います…」
軽く頷いて答える。
心の中では、俺には一番合わない言葉だなと皮肉に思った。
「よしっグループ名はこれで決まり!では次にリーダーを決めたいと思います。」
企画事務所員の人がそう言った。
「はいっ!オレオレ、俺がやります!やっぱりチームを引っ張っていくのは俺みたいな奴でしょ!」
海斗が勢い良く手を挙げて自分を推薦してくる。
「えー海斗に付いてくなんて不安でやだよ…リーダーは可愛い僕がやらなきゃ!ファンも一気に増えるよ❤︎」
秋は満面の笑みで自分を推薦する。
「…俺は、リーダーには司くんが向いてると思います‼︎」
洸は何故か俺を推薦してきた。
俺はその言葉に洸の方を見て、目を見開いて驚く。
「あんた何言ってんの…」
俺は少し洸を睨んだ。
「俺は司くんがいい!絶対司くんかリーダーに向いてると思います!」
さっきから遠慮してばかりの洸が何故か引こうとしなかった。
「洸くんがそんなに推すならみんな司くんがリーダーでいいですか?」
事務所員の人がみんなに尋ねる。
「まっいっか、司が一番年上だしな!」
海斗がそう言う。
「ちょっと不満だけど…僕は海斗以外がリーダーならそれでいいよ」
秋も賛成してきた。
さっきまで自分自身を推薦してた奴らが何故か賛成してくる。
「司くんはどう思う?君がリーダーでいい?」
企画事務所員の人は俺に尋ねてきた。
「えっ…はい、皆んなが推薦するのならば…」
心の中ではふざけんなと思いつつ、断れず承諾してしまった。
「良かった…司くんがリーダーで!」
洸が俺の方を向いて無邪気に笑ってそう言ってきた。
最悪だと俺は思った。
…………………………
話し合いが終わって皆んなが帰った後、洸はトロくさそうにまだ帰る準備をしていた。
「おい、何で俺をリーダーに推薦したんだよ…」
俺は洸に尋ねた。
「それは司くんがリーダーに向いていると思ったから…」
洸は俺の方を見てそう答えた。
「それだけ?」
俺はそんな理由で選んだのかよ…
「あと…司くんはとても優しい人だから皆んなのこと大事にしてくれると思ったし…
それに俺『HIKARI』って聞いて司くんに一番ぴったりだと思ったんだ!」
洸が目を輝かせながら笑顔でそう言った。
「はぁ?…
……俺が一番似合わないと思う。あんたの方がよっぽど似合うと思うけど…」
ボソッと俺は言った。
何を考えて俺のことをそういう風に思ったんだ。
洸は俺にとって今まであ会った事がない不思議な存在だった。
洋館の外に出ると外は夕日色に染まっていた。この辺ではこんなになるのは珍しい光景だった。
「あっ見て夕日が綺麗…
今日はいい日だったなぁ〜」
夕日に照らされ無邪気に笑っている洸の姿の方が綺麗だと思った。
俺にはもう無いその無邪気さがとても眩しく感じた。
「…洸…俺のこと司って呼んでくれ…」
俺は何となく言ってみた。
「えっでも司くんは年上だし…」
洸は遠慮してそう言う。
「気にするな…呼び捨ての方がグループに団結感があっていいだろ?」
俺はそう言って洸を説得してみる。
「えっじゃあ…つ…司…」
遠慮しながら洸は言った。
俺は何故か嬉しかった。
この時から俺にとって洸の存在が特別に見えた。
ドジなこの少年の無邪気に笑っている姿をもっと見ていたい、守ってあげたい…。
……もしかしたら俺はこの時から……
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