アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2
-
「俺の何が悪かったんだと思う?結構、優しいと思うし、あ、やっぱ顔か?なあ?」
詰め寄る酔った先輩にたじろぎながら、首を振り励まし続ける。
今日集まった皆は店に着くなり勢いよくお酒を飲み始め、すでに酔っぱらってしまっている。
クリスマスなんてという言葉から、それぞれに恋人との破局や失恋の理由を話し始め、その内の一人は号泣している。
僕は殆ど飲まず、ひたすらに聞き役と世話役を務めている。
「お前はどうなんだ?」
突然ふられた話に言葉に詰まる。
「…えっと、僕ですか?」
皆が僕に注目し始めたので、トイレに行きますと慌てて個室から飛び出した。
後ろから逃げるなとか何とか聞こえてくるけれど無視してトイレに駆け込む。
「はあ…」
大きく溜め息を吐くと、洗面台に手を付き俯く。
「言えるわけない…」
相手が同性で、喧嘩別れをして、まだ忘れられないなんて。
それに聞いて欲しいわけでもない。
彼との思い出は僕だけのものにしておきたい。
辛い事が沢山あった。でも、楽しい事も、幸せだと思う事も沢山あった。
もう、こんな関係、うんざりだ
最後にそれだけ言って離れて行った彼も、今はそう思っていてくれたら嬉しい。
けれど、そう思っているのは僕だけだと分かっている。
考えれば考える程、虚しく、泣きたくなる。
暫くそうして、そろそろ戻ろうかと考えている時だった。
「ちょっと、しっかりして下さいよ」
「無理…」
そんな会話が聞こえ横を向く。
「…え」
驚きで言葉を失い、僕に気付いたその人は目を見開き静止している。
「なん、で」
僕だってそう思う。
まさか、こんな場所で今思い出していた別れた恋人と再会するなんて誰が思うのか。
「ちょっと入ってくるわ…」
そう言って彼に支えられていた男性がトイレの個室に入って行く。
残された僕達はただ茫然と見つめ合う。
何か、言葉を探すけれど、今言うべき言葉が見つからない。
鼓動が高鳴る。
それは間違いなく残したままの彼への想いのせいだ。
「…久しぶりだな」
彼が目を逸らした。それに少し胸が痛む。
「…うん。元気だった?」
彼はああ、と頷いた。
それからまた沈黙が始まる。
「あ、今日は、職場の人達と、飲みに来ていて!」
彼に何か聞く事が出来る雰囲気ではなく、彼は興味が無いであろう僕自身の話を始める。
「独り身ばかりの、寂しいクリスマス会みたいなもので、何だか、皆やけ酒みたいに飲んで酔っ払っていて」
やはり興味なさげにそうかと返される。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 5