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さり気ない
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「〜……からして、ここは〜………」
一時限目が始まり、教師の声が教室に響く。それを俺は聞くふりをして本を読む。
席順は名前順なので、綾と俺は離れている。だから後ろ側の綾が何してようが、前側の席に座る俺には分からない。
「………」
今俺が読んでいる本は、心を閉ざした魔女と魔女狩りを命じられた剣士の物語。
禁断の愛とだけ言っておこう。俺はジャンル問わず読む雑食なのでなんでも読む。
最愛の彼を失い、心を閉ざして森に引きこもる魔女は、ある日人間の罠にかかってしまう。
長年引きこもっていた魔女は魔力が落ちてしまいその罠から逃げられない。
そこに偶然、魔女狩りを命じられ森に探索へ来ていた剣士と出会う。
二人は一目見た瞬間、恋に落ちたという。
現実に一目惚れなんて、ただの夢だと思っている。
勿論、俺には恋愛なんて程遠い話。
人を愛する気持ちは美しい。ただ、それが俺に似合わないだけの話なんだ。
「えー……では坂秋、この問題を解いてみろ」
「…はい」
本をこっそりとしまい、黒板へと歩く。
チョークを手に取り、カツカツと答えを解いていく。
「………よし、正解。戻っていいぞ」
「はい」
あぁ、現実を見るのは嫌だ。早く、本の世界へ逃げたい。
ふと、前を向くと、綾がじっと俺を見ていた。
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