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さり気ない②
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口パクで何かを伝えているが、距離があって分からない。
首をかしげ、自分の席へ戻る。とりあえずノートだけは書いておこうと筆箱を開けた。
「?」
そこには、小さく折り畳まれた紙と飴が入っていた。
しかもご丁寧に俺の好きなミルク味。
紙を丁寧に開くと文字が書いてあった。この字は綾の字だ。
男の癖に丸っこい女子みたいな文字は特徴があって分かりやすい。
『今日朝から咳してたでしょ?飴でも舐めて潤して』
どうしてそれを知ってるんだろう。
確かに、朝喉が乾燥していて咳をしていた。痛いのは変わらないが咳は止まっていた為、綾は知らないと思っていた。
そーっと後ろを振り返り、綾を見る。綾は視線に気がつくと、とろけるような優しい笑みで、手を振った。
その笑顔に、胸がキュンッてして。
はっ、として、慌てて前を向く。封を開け、飴を口に放り込む。
口に甘いミルクの味が広がり、身体が甘い毒に犯されているようだ。
なんだよあの笑顔。不覚にもときめいた自分がおかしい。
さり気ない優しさが、胸に溶けていく。
本を開き、文字を目で追うけど内容は全く入ってこない。
こんな事、今までで初めてだ。
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