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体育祭⑫
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「なっな、な………!?」
「ちょ、瑞貴暴れないで」
「何してるんだよ……っ!?おま、これ……っ」
「とりあえず今は大人しくしてて、傷に響いちゃうから」
「〜〜〜〜〜……………っ」
脇下と太ももの裏側に手を差し込まれ、映画とかである姫抱き状態にいる俺。
靴脱いでたから今裸足だし、何より女子の目線が一層怖くなったんですけど。
羞恥と共に、人の視線に恐怖を感じた。
やだ、皆見てる。あの人も、その人も、この人も。
きっと、綾が俺を抱きかかえてるから。
俺なんかを抱きかかえて走ってるから、綾が嫌な思いする。
身体が震えてきて、瞬間的に綾の服を掴む。怖い、人の目が怖い。
こんなにも人が怖いなんて初めて思った。
降ろして、俺を離して。
「瑞貴、大丈夫」
「やだっ、怖いから……俺、降ろして」
「怖くない怖くない、大丈夫。俺がちゃんといるでしょ?」
「でも、綾が嫌な思いする……」
「たかが他人でそんなのしないよ。俺は瑞貴がいれば何も怖くない」
「っ………」
綾が身体を引き寄せて、顔を隠すようにしてくれる。
駄目だよ、綾が変な目で見られるかもしれないんだよ。
それなのに、押し返す事も離すことも出来ない。離れられない。
「みーずき、俺の目見て」
「や、だ」
「怖くない怖くない、大丈夫だから見て?」
「………っ、ん」
恐る恐る顔を上げて、綾の目を見ると。
綾はあの優しい笑みを浮かべている。胸がきゅんとして、安心するあの笑み。
綾がこんなにも安心させてくれるのに、なんで俺は不安がるんだよ。
信じなきゃ。綾が俺を信じてくれるように、信じなきゃ。
震える手を首に回し、ぎゅっとしがみつく。離れないように、安心出来るように。
綾は一番でゴールした。
『さ〜て女子達から物凄い悲鳴が上がりましたが綾君が一番!
お題は一体何だったんでしょうか〜?』
実行委員が紙を取りに来て、それを渡す。それを実況は読み上げた。
『お〜〜っとぉ?なんと、お題は「大切な人を姫抱き」!!
綾君、今抱きかかえてる人が君の大切な人という事だね!?』
「はい、瑞貴は俺にとって凄く大事な人です」
「っ」
『え〜と君は確か瑞貴君だね?綾君に大事な人って言われてどうかな?』
「えっ、え、ぁ……お、俺も、綾が大事な人、です」
まさかふられるとは思わなくて、しどろもどろに答える。
綾が笑ってて後でシバくことにした。
『お二人とも仲が良さそうで〜!女子達よ、この関係性に勝て無いでしょうね〜ドンマイ!』
改めて、俺は綾に大切にされてて、愛されてるんだって実感した。
俺も、それだけの愛を返せるようになりたい。
でも、知らなかった。
それだけじゃ、俺達はずっと一緒にいられないんだって。
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