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「至〜」
放課後、俺は友達の誘いを断って、至のクラスへとやってきた。
至は何人かの友達に囲まれていて、俺が教室に訪れるのが分かると、すぐに至は顔を上げて俺を見た。
「久しぶりじゃない?春がわざわざ俺のクラスまで来るのなんて」
至の席の前に座って向かい合わせになるように座ると、後ろに座る至が少し笑って言った。
「そうだっけ」
「そーだよ。」
至の友達の奴らは俺が来ると皆はけていき、至とそれからくだらない話をしていると、約数十分後には、教室には俺と至以外すっかり誰もいなくなっていた。
まあ、学校残ってわざわざすることなんてねーもんなぁ…。
「で、なに?」
ビク
顔を上げると、至は窓の外の方を向いて、手のひらに顎を乗せて机に肘をついてた。
考えてみれば、わざわざここで話さなくても家帰って至の部屋とか俺の部屋で話しても良かったよな…。
空は既に夕暮れ色だった。
「…クリスマスイブの日、」
「…ん?」
至って…、
「お前、携帯鳴らしても、家行っても、出なくて、いないし。」
「……。」
「すごい、俺、心配してた。」
……本当にいつの間にこんなに、
でかい手して、俺より男らしい肩して、
そして、いつの間にこんなに、
俺から自然と目をそらすようになったんだろう…ー。
「あの日、」
グラウンドから、野球部の掛け声が聞こえる。
この教室の近くを走る、生徒の笑い声が聞こえる。
俺たちはいつから、本当に心の底から、笑えなくなってしまったんだろう。
俺はいつだって、…無口なお前の瞳の色を探るー。
「…なんか、あった?至」
至は俺の問いに、しばらく窓の外の方を向いて何かを見つめたまま、なにも言わなかった。
けれど、数分が経って、それでもなにも言わず、そしてピクリとも動かない至を見て、俺は思わず痺れを切らして声をかけようとして、
「ないよ。」
ただ、一言そう呟いた至の声を、俺は呆気にとられたように、口を開けたまま耳にした。
「……ない…んだ、」
「うん」
その言葉に、俺は、ホッとしたような、残念なような、よく、わからないような…。
ーて、いや違う。そうじゃなくて…!
「じゃなくて!!」
声大きめに言うと、至は驚いたように窓の外から目線を俺に移した。
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