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「そうじゃなくてさ…、」
ないよ…って、そんなわけないじゃん。
何もないのに、何で外泊…!?
「おまーっ」
「泊まったよ。」
「…え!?」
「友達の家にね。」
淡々と言う幼馴染の声に、俺は頭をこんがらがせる。
「俺だって、たまには友達の家にだって泊まるよ。もしかしてその日のこと、ずっと気にかけてた?」
慌てる様子もなく、平然とした顔でそう言って俺を見つめてくる至に、俺は少し言葉を詰まらせる。
「…いや、だって、ていうか、携帯何で出ないんだよ!?」
「単に気づかなかった。携帯離してた場所にあったし、あの日はずっと話してたし」
ーずきん
「…へ、へぇ」
至の言う、友達の家に泊まるってことを至の母親づてに聞いて、それを信じてなかったわけじゃない。
だけど何となく違う気がしたから。
でも、そっか…、
至が自分からそう言うんなら、そうなのかな。
でも、…俺、いま、変だ。
「…そっか。あぁ、ならいいんだ全然!もしかしたら変な犯罪にでも巻き込まれてたのかと思ってさ〜ッ」
「はあ?…なわけないだろ」
呆れた顔で言う至に向かって、俺は屈託無く笑う。
ー〝単に気づかなかった〟
「だよなぁ〜〜!あっつーか俺、今日早く帰んないとやばい日だった!両親仕事遅い日だし夕飯しとかねーと弟うるせーしさぁ〜〜」
ー〝もしかしてその日のこと、ずっと気にかけてた?〟
俺は、笑う。
ひたすら笑みを浮かべる。
…くだんない、俺。
だってこんなこと気にしたって仕方ないじゃん、
至が悪いわけじゃない。俺が、勝手にこんな気持ちになってるだけで。
俺は、
「じゃあ、俺も帰っ」
「ーや、先に帰るわ!!」
至の声を遮って言うと、至は俺を見て立ち上がる動きを止める。
「…春?」
俺は、
「いやぁ〜今日はほんと急ぐし、走るから、だから、1人で帰るわ〜」
…なんて、女々しいーー。
至は知らない。
俺があの日走り回って至を探してたことなんて。
分かってる。
こんなこと思うなんてこと自体押し付けがましいって分かってる。重々分かってる、…でも、悲しいものは悲しいー。
至の前から姿を消して、学校から出て、家へと帰った俺は、下にいる弟に気づかれないように、部屋の隅で声を出さずにいつまでも泣いた。
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