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「あっ、春さん」
落ち着いて、服もきちんと着替えてから下へ降りると、至の弟の湊くんにちょうど会った。
「おおっ湊くん、久しぶりだな〜っ。」
にこっと笑って至に似た湊くんの黒髪の頭を撫で…ようとしてハッとした。
「…湊くん。君身長いくつだっけ…」
「え?えっと、確か178センチです。」
……な、…でかッッ!!
俺なんて、…俺なんて、170あるかないか…くらいなのに。
そもそもにして、至だって背がすごく高いから。なんて言うか、そういう家系なのかなぁ。
お母さんの方は至って普通だし、てことはやっぱ、離婚したお父さんの方の影響かな…とか、ちょっと思ったり。
ふんふんと考えていると、こちらを見る至の視線を感じて俺は靴を履く。
「じゃあ」
湊くんに手を振ると、俺は玄関の扉を閉めた。
前を向くと、至がじっとこちらを見てた。
「…っな、……何だよ」
さっきの、イ…イッたことで、何か文句でもあんのか…っ?!
と言った視線でギロッと、最早開き直ったようにして至を睨み見返すと、至はフイと俺から顔を逸らした。
「なんか、急に、さっきはごめんな。」
歩いてすぐの俺の家の前まで来ると、至は少し反省したように言った。
「…い、いや…別に」
「嬉しくて。」
「…えー」
どき
至を見ると、至はやっぱり俺の方は向かなかった。
「…家出るとか言って、お前のこと泣かして、こんなん言うのもなんだけど」
「…」
「…良かった。…春の、そういう気持ち聞けたから」
もう辺りは薄暗くて、俺ははぁと少し白い息を吐きながら目をさ迷わせた。
すると至はようやく、こちらを向いた。
平然と、当然のように俺の目の前にいる至。
ずっと、当たり前だった日常。
…でもそっか。…至は、この家からいなくなるんだっけ…。
……単純に、ーー寂しい。
「…ッくしゅん!」
もう二月と言えど、まだ夜は凍えるように寒い。
ずずっと鼻をすすると、ぽんと至に頭を触られた。
「もう、家に入れよ。風邪引く」
嫌に優しい至に、俺はその慣れない恥ずかしさでなく、咄嗟に切なくなるような気持ちを抱いた。
電車で2時間だなんて、そんな時間をかけないと、こんなふうに会うことすらもできないだなんて…ー。
寂しい…。
俺は至の頭を、至が俺にしたお返しとばかりにくしゃくしゃと撫で、そうだな、と呟いた。
今日は、何だか色々あった…。
家の玄関の扉を開けようとすると、俺は不意に腕を掴まれる感触に目を開いた。
振り向くと、俺からまた少し目をそらす至がいた。
「…悪い。その、なんだ。…色々言ったけど、言われたけど、…」
「…」
「お前は…俺のこと好きでいいんだよな」
確かめるように聞く至の言葉に、俺は少し間を空けてから頭を縦に振った。
「至は…、…至も…俺のこと好きでいいんだよな…」
同じように確かめるように聞いた俺の言葉に、至は少し笑って、ああと言った。
幼馴染で、親友で、ずっと昔からいた一緒にいた存在。
至は昔から、他の誰よりも大切だと思ってた。
至だけが、俺の心の拠り所だった。
「…家は出るけど、」
「…」
「今みたいに頻繁には会えなくなるけど、」
「うん」
「…だけど、それでも、
俺と付き合ってくれると、……嬉しい。」
…見たこともない、至が、そこにいた。
至に言われることなど到底ないと思っていた言葉。
当たり前だ。
俺たちは、ずっと、
ー『2人は本当に、兄弟みたいね…。』
そう、言われてきたのだから……ーー。
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