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…春の季節は、嫌いだ。
だって、春は、全ての始まりを意味する季節だから。
新しい環境に慣れなきゃなんないし、新しい人間関係も築かなきゃなんないし、自分の立ち位置を把握しなきゃなんないし、つまり面倒くさがりの俺にとって、春はさいっきょーに、鬱陶しい季節なわけで。
ヒラヒラと舞う桜に、俺ははあと怠い息を吐く。
今日は一応大学の入学式というものだが、親は仕事で来れず、俺は1人慣れないスーツを着て受験したあの日ぶりの大学へと入門する。
ふと携帯で見た時刻は式の始まる30分前。
まあ余裕はあるな…。
そう思いながら足を進めたとき、不意にポツリと上から冷たい雫が落ちた気がした。
雨……?
そう俺が思ったか思う前か、ポツリポツリと雨が徐々に降り出すのがわかった。
嘘だろうっ…、何だってこんな入学式の日に雨…!
俺は慌てて折りたたみの傘を鞄から出して、咄嗟に頭上に差す。
雨足はそれから弱まるどころか強くなっていき、俺はサークル勧誘の紙を片手で受け取り、もう片方の手で傘を差し、胸に鞄を抱き抱えながら、息絶え絶えにようやく大学の式のある場所へと辿り着いた。
つーか…、こんな色々持ってて大変な時に、サークル勧誘の紙無理矢理渡してくるかなぁ…っ、
てかどんだけ入れさせたいんだよ…っ!
とりあえず近くにあった誰も座ってないベンチに大量の紙を置くと、俺はひとまずそこに座って息をついた。
周りを見渡すと、当たり前だけど親子連れの奴らばかりで、ワイワイと賑わっていた。
入学式…ねぇ。
俺は雨というのもあり、少し濡れたスーツが気にかかるのもあり、大分憂鬱な気分だった。
早く式終わらせて、早く帰って、早くゆっくりしてー…。
俺は周りの晴れやかに笑う表情とは対照的に無表情な顔をして、1人ただそんなことを思うのだった…ー。
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