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「…家に行くのが悪いのか」
俺の言葉に、至は顔を上げる。
「…いや…」
何で……
「お前だって…、勝手に行ったじゃん」
…なんで、俺ばっか…。
何で俺ばっかり、こんなふうになんないとならない。
俺は何も悪いことなんて、何もしてない…ー。
何も、してねぇよ…っ!
「お前だって、友だちの家っつって、クリスマスイブの日、俺には何の断りもなしに、俺には何も言わずに…っ、…友達の家、泊まったくせに……ッ!!!」
ムカつく、ムカつく、ムカつく、ームカつく…!
俺ばっか、何だよ…!!
至だって、至の方が…、俺よりサイテーなことしてんじゃねぇのかよ…!
ズッと、鼻をすすると、至が立ち上がる俺の元まで近づこうとする。
「来なくていいから、」
それを察して言葉強めに俺がそう言うと、至はその場に立ち尽くして、涙を目に溜める俺を見つめる。
こんなことを言いたかったんじゃない。
こんなこと言いに、こんなとこまで来たんじゃない。
そうじゃ、なかったのに……。
…そうじゃ、…なかったのに…ーー。
俺は唇を強く結んで、そのまま踵を返して、バタバタと走って至の部屋を出た。
至に捕まらないように全力で帰り道を走り抜けた。
はあはあと息を吐いて駅に着く頃には、涙はもう止まっていた。
俺は後ろを振り向いて、誰もいない見慣れない風景を目の当たりにした。
…多分至は、俺を追っては来なかったんだー。
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