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「へ〜バイト始めるのね」
母親に言われてうん、と頷く。
「兄ちゃんがバイトね〜〜ふーん」
魚の煮付けをつまみながら興味無さそうに弟が言う。
「じゃあこれから、帰りが遅くなる日も出てきちゃうのね」
「ーあ、そうそう。だから俺も母さんたちの帰りの遅い日に毎日夕飯は作れない。だから白兎、」
そこまで言いかけると、キッと弟のーー白兎(ハクト)に睨まれる。
「何それ。俺のこと馬鹿にしてんの?俺、もう高校生なんだけど」
俺はその言葉に箸を持ったままはあと息を吐く。
…だから何だ。
ガキ中のガキのくせに。
「いいよー別に。そんな俺1人の為に気遣わなくてもさ。友達とテキトーに食べに行くし〜」
「ー何言ってるの、それはダメよ。外食でしょう。お金もかかるし」
すると、白兎はぶぅと頬を膨らましてそっぽを向く。
「そうだ、ちゃんとしたもの食わないとお前背ぇ伸びないぞちっせえまんま」
加えて俺がそう言うと、兄ちゃんに言われたくない!と白兎に歯向かわれてしまった。
まあ、確かにな。俺もそうは思うんだが。
「じゃあどうしろっつーんだよ…」
むーっと膨れる白兎を見て、俺は少し考える。
こんな奴だが、一応弟だし、1人にさせるのは俺も心配には心配だ。
もし泥棒が入ってきたら、もしこの家が火事にあったら…。
しばらく考えて、俺はある1つの答えにたどり着く。
………あ、そっか。なるほど。
「白兎、俺も母さんも父さんもいない時は至の家に行け」
多分、至のとこの母さん優しいし、それに至も家出て行っててすごく寂しいと思うし…。
まあこんな奴が行って、逆に迷惑にもなりそうでもあるんだが。
1人でこの家にいるよりはマシだしな。
「あら、そうね。そういえば至くんのとこの弟の湊くん?白兎と同い年だしねぇ」
「ーちょ、!?ちょっと待てよ!…やだよっ!俺、あいつのとこ行くの!?絶対ヤダ!」
母さんの声を聞いて嫌がる白兎を見て、俺は目を瞬かせる。
あれ、こいつって湊くんのことあいつって…。ふーん、そんな仲良いんだ、2人。全然知らなかったな。
まあ、同じ学校だもんなぁ…一応。
「とにかく、絶対そうしろよ。くれぐれも、至の母さんに迷惑のないように…」
「うっせえざけんな勝手に決めんな!!黙れこのホモ!」
……。…ああん?
「てめぇ俺がわざわざお前の心配してやってんの…」
「ー心配なんかしてくんなっ!うぜえんだよ!」
バンッ!!
白兎はそうひとしきりまくしたてると、リビングを音を立てて出て行いった。
…ったくもう…。あの野郎…ほんっと可愛くねぇ…。弟って自由でいいよなあ、自分の思うまま生きてるって感じでさ。
「春、」
「なに?母さん」
「…あんたも、もう大学生なんだから自分のやりたいようにしていいのよ。」
え…ー
「たまの外泊だって、許してあげるから」
多分、…俺を気遣ってだろう母の言葉に俺は箸を止めた。
何でこんなこと思うのか分からない。
別に母さんもそんな意味を込めて言ったんじゃないと思う。
深い意味なんて無いんだろう。俺の考え過ぎなんだろう。
だけど、
…頭に、唐突に浮かんだ。
俺と、その俺の隣に可愛い彼女でもいたら、きっと母さんは、すごく幸せそうに笑うんだろう、…とー。
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