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ーーーーー
ーー
『ねえ、何で何も話さないの?』
『聞こえない、なあ聞こえない、何て言ってるの?』
『水島くんって静かだよね。大人しいっていうか』
……
『せんせー、水島君の声が聞こえませーん』
『てゆうか、早くして欲しい…』
『全然先進まないじゃん』
『早くしろよ、うぜー』
………
……
…なぁ、……なあ!…
『ーなあ!水島、これ。見ろよ』
「……。…何?それ」
『これはさ〜ちっさい頃に行ったスタジアムで俺の憧れの選手が投げたすげえボールなんだぜぇ。な、すごいだろ』
「……うん、すごいね。」
『…水島は、野球とかしないん?』
「……うん。…したことない、かな」
『楽しいんだぜ、投手と野手があって…こう』
「あはは」
『…なんだよ』
「あ、…えっと、野球好きなんだなって思って」
『…うん。すっげぇすき』
「うん、」
………
『…水島、水島!』
『……』
『何で無視すんの?俺、何かした?』
『……』
ー〝なに、あいつと最近仲いいね。つーか、ラブラブ〜みたいなっ〟
ー〝うっせぇ。そんなんじゃねぇ〟
ー〝知ってんだぜ〜お前ら校舎裏で2人で最近いんの〟
ー〝…〟
ー〝あいつといて何が楽しいの?〟
『なあ、皆んな聞いて聞いて!水島とこいつ、できてんだってッ!』
『…はあ?何それ、どっちも男じゃん』
『知ってる。それ、ホモって言うんでしょ。男が男を好きになるの』
『え、…ちょっと、ほんとに?』
『まじで〜〜〜?!お前らぁいつの間にそんな仲になってたの〜っ?あはは、ちょーウケる』
『クスクス。てゆうか、キモすぎ』
『ーっ、…違う!!!!』
……ザワザワ
『…………ちげぇよッッ、…俺はあんな奴一度だって、…好きだなんて、思ったことねぇよ。』
……
『……何も面白いこと喋んねぇし、好きっつうか寧ろ、…俺は大ッ嫌いなんだよ!あんな奴……ッ!!』
ー
…はる、
春……
ー〝また中学一緒だな〟
ー〝おう!これからもずっと至と一緒だったらいいのになぁ〟
ー〝はは、何だよそれ〟
『…ごめん。春…俺、家出る…』
『何で……』
『ごめん、ごめん、…春、ごめんな』
『なんで、…何でーー』
……なんで、……みんな、皆んな、…俺から離れていくんだろうーー。
大事にすればするほど、大切にすればするほど、皆んな俺の前から…去っていく…ー。
俺の前から、姿を消していく…ー。
どうしたら、側に長くいられるかな
どうしたら、もっとずっと、近くで笑ってられるかな
どうしたら、周りにちゃんと、認めてもらえんのかな……ーーー
どうして、一緒にいることさえも、こんなに難しいんだろう…ーー
どうして、…どうしてーーー
俺、だけ………ー
…ーハッ
「……」
目が覚めると、俺は自分のベッドの上で部屋着姿で寝てた。
耳を澄ませると、下から微かに弟たちの声が聞こえた。
俺は上半身を起こして、壁にかかる時計を見てからふと、ぐっしょりと汗を掻く自分の体に気づいた。
ふと自分の濡れた頬を触って、それから俺は今日会ったあいつの顔を思い出した。
……もう、二度と……、
………会いたくなかったのに………ッ……ー
俺は目を閉じ唇を噛んで、ベッドの上に強く握った両手の拳と、自らの頭を、痛いくらい押さえつけたー。
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