アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
65
-
俺は、下に下がってきた白兎を一度軽く背負い直してから、少し離れた前方にいる湊くんを見て笑った。
「……すっごく、…元気だよ。」
そう言ってにこっと笑って、湊くんを見つめると、
湊くんは多分、戸惑って、困ってた。
…でも、元気だよ、俺は。
いつだって、そうじゃなきゃいけない。
そうじゃなきゃ、俺は、駄目だから…ー。
湊くんは俺を見て、何か言おうとして、口を閉じた。
「…お母さんが心配するから、今日はもう帰りな」
俺はまだ留まる湊くんを見て、微かに笑って言った。
すると湊くんは俺を見て、少し迷ってから、ぺこ、とお辞儀をして歩いて家へ帰っていった。
……わかってる。
分かってるよ…ごめん、湊くん。きっと湊くんは、俺のこと心配してくれてたんだ。
ずっと、至といた俺のことを、一人きりになってしまった俺のことを、彼は…気遣って、あんなことを言ったんだ。
分かってる……。…俺は湊くんに嘘をついた。
分かってんだ…。…俺が嘘つきなことくらい、俺が一番痛いくらい、分かってんだ…ーー。
ーーー
ー
翌日俺は大学に行って、講義室に座る楓を見つけると、楓〜と言って笑って動かそうとした口を途中で止めた。
「あ、水島」
楓の隣にいた人物に声をかけられ、俺はピシッと体を固まらせた。
なんで、…何で楓と…コイツが……。
「春、こいつお前の友達なんだって?1人で講義受けるの寂しいって言うから、一緒に受けようかってなって」
…こ……講義くらい1人で受けろよ…!座って聞くだけだろ…っ?!一緒にってなんだ、一緒にって!!
てゆーか…っ!
「お前っ、大体1人なわけねーだろ!昔友達あんなに大勢いたお前が、ぼっちなわけねーだろっ!」
指をさしてそう声を上げると、彼ーー佐原 翔は、俺と同じように席を立つ。
「だ、大学はそーでもねーんだよ!俺、全然いま友達いねえし!正真正銘ぼっちだし!!」
俺以上の声を上げて言う翔に、俺は眉をひそめる。
すると、そんな翔の元に誰かがやってくる。
「翔、お前先週の物理の講義出たー?」
……うん?これは友達じゃねぇのか?
「翔〜今日の放課後どっか寄らね〜?」
……これこそ友達じゃねぇのか?
……てゆうか、友達やっぱいるんだろコイツッッ!!!
「どうどう、春、落ち着いて。いいから席に着け」
「か、楓っ!」
何で楓はこいつを受け入れる…!?
「いいから、話をちょっと聞けって。こいつは、昔お前にやったことで酷く後悔してるらしく、そのお返しにお前に何かしたいと言ってて」
はあ…!?
…いやまて。…で、そのお返しがなんだ、俺とまた友達になるってことが、お返しとでも言うのかっ!?
そんなの…、
「…水島、昔みたいに話せなんて言わねぇよ、ただ、こんなとこで偶然会ってさ、それきりってのもあれかなと思って…」
な…
「た、たまに飯食うとかさっ、そんで昔みたいな感じに戻ったりしねぇかな?昔のこともあるし、全然雑用押し付けてくれてもいいしよっ、な…っ?」
のんきにそんなことを言って笑う佐原 翔を見て、俺はわなわなと体を震わせた。
…全然いっみわっかんねぇ……
はあ…?あんなことがあって、今更会ったところでそんな簡単にあの頃に戻れるわけねーだろこの野郎…!!!(とっとと失せろ!!)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
70 / 326