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もうすぐ、期末試験がある。
そしてもうすぐ、俺たちはまた、夏を迎える…ー。
ー
「楓〜…ここの意味なに〜?意味わかんないー…」
ある講義が終わって、俺は席から立ち上がらず、机の上に頭を乗せてから、もう限界だった思考を止めた。
楓はそんな俺を見て、ふう、と息をついてから一度立ち上がった席に、再び座り直した。
なんだかんだ言って、楓は優しい。
一見、見た目は構ってくれなさそうだけど、そういうとこすごく至に似てるけど。
「…どこ?」
もう既に半袖の夏の服を着て、楓は俺の隣で肘をついて、俺の用紙を眼鏡越しにじっと見つめる。
そうして今ふと思ったことだけど、楓って
「…楓って、カッコいいよな。」
そう、じーと楓を見ながらいつの間にか真顔でそんなことを口にしてしまうと、楓は急に目を開いたかのようにして、横にいる俺の顔を見た。
「…お前…急になに言ってんの?」
そう言って頭を抱えたようにする楓に、俺はきょとんとしながら続ける。
「だって、カッコいいよな?頭も、全然悪くないし、いつも冷静だし、眼鏡してるし、バイトできるし、受け答えもはきはきしてるし。」
すらすらと述べていくと、そばで楓が何故か更に頭を抱えていくのを見る。
そんなおかしなこと何か言ったかな。
「…あのさ…お前ほんと変な。頭は別に良くはないし多分普通だし、冷静に思うならそれは単に冷めてるだけ。あと、眼鏡は関係ねぇ…」
呆れたように呟く楓に、俺は少し黙って、それからそっか、と言ってペンを握った。
冷めてるだけ…か。
それでも、カッコいいと思ったんだけどなー…俺。
「で、どれが分からないの?」
すると、不意にとんとんと、隣で楓が俺の広げてた紙を人差し指でつつきながら、無表情に尋ねてきた。
「あっ、それがここのー…っ!」
俺はそんな楓を見て笑って、それからいくつもの質問をした。
けれど、楓は俺の何度もする問いに嫌な顔一つせず、俺が分かるまでずっと、隣にいてくれたんだ…ー。
ー
「兄ちゃんおかえり〜」
家に帰ると、珍しく白兎が玄関まで出迎えてきて俺にそう言った。
「え。なに…珍しいな。お前が出迎えてくるなんて」
ちょっと怖い。
「…、…べっつにっ。意味なんかないし」
明日雪でも降るのかな、そう思ったけど、ツンとしてすぐリビングに向かった白兎を見て、ただの気まぐれか…と俺は苦笑する。
それから、俺もその後に続いてリビングへ入ると、キッチンテーブルの席にふと、湊くんがいるのを見つけて俺はそれに少し驚く。
「あいつのとこ、お母さんが今至んとこまで様子見に行ってんだって。そんでこいつ1人になるからよ、だから」
聞こうとすると、そばに立つ白兎が俺にそう言った。
ああ…と、俺は特に聞き返すこともなく、それにすぐ納得した。
…そっか、そういや至の母さんは、昔からすごく至に対して過保護だったっけ…。多分それは湊くんに対しても変わらないだろうけど…。
片親な分、やっぱ…多少とも気にすることもあるだろうしな…。
俺はその後、俺に気づいた湊くんがガタッと席を立つのを見て、俺は笑った。
「湊くん、今日はゆっくりしてっていいんだからな」
ニコ、と笑って言うと、湊くんは無表情だった顔を俺と同じ笑顔に変えて、はい、と嬉しそうに返事をした。
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