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「……。」
ー〝もしどちらか…空いてたら…お祭り一緒に、俺と…行きませんか?〟
次の日の大学の講義中、俺はぼうっとして教授の話を聞きながら、昨夜の湊くんの言葉を思い出していた。
別に…特に断る理由もない。
相手は湊くんだし、それも至の弟で、昔からすごく親しかったってわけではないかもしれないけど、俺にとって湊くんは、もう1人の本当の弟のような存在で。
至に似て、あんま笑わないけど、喋ると意外に楽しそうに笑うし。
実際、背があんなに高くなるとは昔は全然想像もしてなかったけど…。
俺は携帯を開き、至とのトーク画面を開く。
〝今年の夏祭り、12と13、どっち行く?〟
そうパパッと打って送ると、俺は肘をついて、すぐ左横から見える窓の外の景色を見た。
講義中はとても静かで、喋る声もなく、後ろに座っていた大抵の人間は寝ていて、隣に座る楓も、いつの間にか机に頭を突っ伏して寝てた。
窓の外から見える大きな木の葉が、気づけばもう、緑一色に、変わっていた。
ー
「水島〜」
講義も全て終わって自宅へ帰ろうとすると、俺はその声を聞いてピシッと体を固まらせた。
…出たな。
そう思いながら後ろを振り向くと、にっと笑ってこちらを見て手を上げる佐原 翔の姿。
なんて言うか、こいつだけはほんと…昔から変わらないというか…。
人懐っこいというか、怖いもの知らずというか、あの頃のまんまというか…。
ふと翔のそばを見ると、数人の友達だろう奴らが集ってた。
……ほんと何一つ変わってねえコイツ…。
「今から俺ら、ゲーセン行くんだけど〜お前も来ない〜?」
…、ーはああっ?!
のんきな翔のその声に、俺は心の中で叫んだ。
意味わかんねえ…っ!まじでこいつの考えてること、意味がわかんねえ…!
「いいじゃん、行ってくれば。せっかく誘ってくれてんだし。バイトもねーだろ」
すると、隣にいた楓がぽんと軽く俺の背中を叩いて無表情に言った。
俺はすぐに思った。
てゆーか…さ、それすごいいい感じに言ってるけど、絶対他人事だからじゃん…?!
「じゃあっ楓も行くなら行く!!」
キッとして俺が歯向かうようにそう言うと、楓はえー…と心底嫌そうな顔をして掛けていた鞄の紐を肩から少しずらした。
ー結局その後、翔と翔の周りにいた奴らと俺と嫌がる楓で、近くのゲーセンに向かった。
ゲーセンに入ると、当たり前だけどガヤガヤとした雑音が辺りを包み、俺はそれから、それぞれにやりたいものをやりに行く翔の友達たちを遠目に見た。
「水島、何やるの?」
ぼうっと特に意味もなく突っ立っていると、ふといつの間にか側に来ていた翔が、笑って俺にそう尋ねた。
よく見ると、翔は耳にピアスを開けていて、昔はどちらかと言うと童顔だった幼い顔つきが、今では程よく端正な男らしい顔つきになっていると、俺は知る。
「別に、何でもするよ」
まだ、彼の目を真っ直ぐ見つめ返すことが出来ずにフイと横を向いて俺が言うと、翔はそんな俺を見て、じゃあさ、と言って笑った。
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