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ていうか…、もうすぐテストあるのに何でこんなとこ来てんのかな…俺らは。
はあ、と息を吐きながら、俺はちゃりんと100円を投入して、何故かユーホーキャッチャーをしている。
というのも、翔がさっき、
ー〝じゃあさ、どっちが先にユーホーキャッチャーで人形が取れるか…勝負してみない?〟
そんな、宣戦布告を…してきたから。
思わずそれに、やってやると、了承した俺の隣で、楓がボソリと、単純…と呟いた気がしたけど、多分気のせい…っ!
昔のことを、まだ彼に対して根に持ってるつもりはないと思うけど、実際ちゃんと謝られたし…
それで良いと俺も言ったけど、まだあの事を引きずってるわけじゃないけど、
けど。
…だけどこの勝負、絶対俺が勝ってやる……ーっ!!
そうしてその結果、
「あ、やったー取れた」
交互に一回挑戦しただけで、俺は見事にすぐに敗れた。
俺はあまりにアッサリとしておっきい人形を取った翔を見て、酷くショックを受け、ダメージを受ける。
…ていうか、絶対慣れてる…。
こいつ絶対、ゲーセン通ってた……。
がくっと肩を落とすと、ぽんぽんと、側で見ていた楓に肩を軽く叩かれ、慰められた。
く、くそう……悔しい……ッッ!!
「水島、」
名前を呼ばれて思わずムッとした顔で彼の方へ顔を上げると、不意に目と鼻先寸前に差し出されるそれに俺は驚いて目を瞑った。
それからすぐに目を開けると、胸に何かを押さえつけられる感覚に俺は眉を寄せて下を向いた。
…うん?
「これ、取っても俺いらないし、お前にやるよ。」
翔の言葉に、俺は少し目を開いて、押し付けられた人形を手にした。
…いや、今思わず受け取ってしまったけど、…でも俺も別に…欲しいとは…。
「あの」
「変な顔してるくね?これ」
返そうとしてそう声をかけたら、俺の声を遮るように翔がそう言って人形を指差した。
「、え?」
「あれだよあれ。ほら、小学生の頃の、育由先生に似てねー?」
にっと笑って言った翔の言葉に、俺は人形をもう一度目にして、その先生を思い出した。
そうして思わず、ふっと笑うと、目の前で翔が俺を見て笑ってて、俺はハッとして慌てて笑みをなくして下を向く。
翔は言った。
「また今度遊ぼうぜ、お前の都合が良い日で、俺の都合が良い日っ!今度は飯食いにでもさーっ!」
にーっと笑う彼の顔を見て、俺はどきんと心臓を跳ねさせた。
…戻れる…のかな。
もしかしたら、俺たちは、あの頃に…。笑い合ってた、あの頃に…。
俺たちは、戻れるのかな……ー。
「良かったじゃん、なんか」
「…え、」
「あいつ良い奴じゃん。お前に悪気があって、こういうことしてるとは到底思えないけど?」
にこ、と軽く笑う楓に、俺は少し気恥ずかしくなって、顔をうつむかせて、ああ…と小さな声で呟いた。
俺は、友達に囲まれて楽しそうに笑う彼の姿を見て、あの頃の俺と彼の2人の遠い記憶を頭の中で思い浮かべ、無意識に微笑んでいた。
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