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ーーーほんとに?
「…っぁ」
大きな何かが、俺の体を引き裂く予兆がする。
なんだ、これは。
痛い、何かが入ってくる、迫ってくる。
こわい、
…嫌だ、怖い、怖いーー。
怖いっっ……!!!!
「……春?」
気づいたら、体を起こして、至の胸を押し返してた。
「………ごめん。……ごめん、俺」
「……」
信じてる。
至のことを一番、俺は信じてる。
だから、これは…信じてない…わけじゃない。
信じてない、わけじゃないんだ…ー。
「…色々…してもらったのに…」
「…」
「……するって俺も決めてたのに。…なのに、…こんなことして、………ごめんっ…」
ポタポタと、布団の上に涙のシミを作ると、
至はそっと俺の肩を引き寄せた。
「…いいよ。」
「いたる、」
「ーいいから。」
口を震わせて声を出さずにポタポタと、至の肩の上に顔を乗せて俺は涙を流すー。
「…そんなことで、謝んなくていい。」
「…」
何で、かな。
「……こんなことで、泣かなくても…いいから…ー」
至が、優しくて…ー。
肩を引き寄せた至の手が、優しくて…ー。
俺は何故か悲しくなって、至の背中に自らの手を回し、涙を流しながら目を閉じたー。
ー
俺はその日、至のアパートに泊まって一晩を過ごした。
もちろん、一線は越えていないけれど。
「おはよ」
至のベッドの中でまだ虚ろな瞳を開けると、既に起きてきちんとした格好をした至が俺を見て言った。
「…うん…おはよ…」
「早く起きて顔洗ってこいよ。朝飯軽く作ったから」
少し笑って言った至の声に、俺は頷いて体を起こした。
そのままぼうっとしながら歩いて洗面所まで行くと、俺はキュ、と蛇口を捻って冷たい水を浴びた。
それによってだんだんとはっきりしてきた脳が、俺に昨日のことを思い出させた。
どう考えても、…昨日のは俺が悪い。
期待させて、途中で中断させてしまって、俺は一体、何に怯えてるんだろう…。
ただ、セックスが、……怖いだけ?
すると、ピンポーンという音が不意に鳴り響いて、俺は扉を開けに行く至を見た。
何となく気になって無意識に隠れるようにして俺はそれを見つめていると、それからガチャリと扉が開いた。
そこにいたのは、小柄な男の子だった。
…友達…かな。
そこまで思って俺はすぐにハッとした。
違う。
ー違う。
唐突に、思った。
…違う、違う。違う。
何……ぼうっとしてんだろう、俺は。
俺は眉を寄せて彼を見つめた。
俺はあの頃の記憶を瞬間的に遡った。
俺は、…俺は…彼を知ってるはずだーー。
だって、
ー〝こんにちは〟
彼は、ちょうど今と同じ夏の季節の日、わざわざ俺のとこまでやってきた子…ーー。
ー〝僕、藤月くんのことが好きなんです。〟
わざわざ俺に、そう言いに来た男の子…ー。
あの子だ…。間違いない…確実に、あの顔は…ー。
……でも…何で、彼が…至のアパートに…?
わざわざ、何でここに……?
ーいいや…違う、
…なんで……今更、あの子が…ここに出てくる……ー?
「……。」
…まさか……ーーー
俺はそこまで思ってから、にこりと至に向かって笑う彼を目に映し、そして、紛れもない大きな不安をその時胸に抱いた…ー。
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