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ガチャリと、急に部屋の扉が開いて、俺はそれに涙で溜まった目を開いて、反射的に下げていた頭を上に上げた。
そこにはー、少しはあはあと息をして、ベッドの上に座って泣く俺を見つめる湊くんの姿があった。
……なん…で…ーー
「……湊くん、…さっき…下に行ったんじゃなかっ」
「どうして」
俺の声を遮って、湊くんが言った。
俺は目の前に立つ湊くんを見つめて、潤んだ目を開く。
「どうして……春さんは…」
そう、どこか悔やんだように言う湊くんの言葉に、俺は目を泳がせながらも、ベッドに座っていた腰を起こして、湊くんのそばに立ち上がる。
「湊くん、えっと、何かあったのか?あ、俺は、えぇと…め、目に!ゴミが入ってっ、も〜それが痛くて痛くって…それで泣いてたわけなんだけどさぁ」
「…」
「あ、まじまじ!ほら、もう泣いてないだろ?あ、びっくりした?ごめんな〜俺こう見えて割とすぐ泣く野郎でさ〜情けねーっ!」
あははと笑ってペラペラとそう言うと、湊くんはそんな俺をただ真顔で見てくるだけで、何も言わなかった。
俺はそんな彼を見て、上げていた口角を下げる。
「なに……湊くん」
「…」
なんで、
「……祭り、…6時じゃ、…嫌だった?」
湊くんは、いつも、
「…ていうか、待ち合わせ…。…家近いから、うーんと、もうそこまで、一緒に歩いて行こっか〜?」
そんなに見透かした目で、俺を見る……ーー?
「…春さんは、いつも笑う」
「え…?」
「俺の家に来る時も、俺と話してる時も、この家にいる時も、いつだって」
……そんなの……
「…当たり前だよ。…楽しいから、笑うんだよ。湊くんといると、楽しいから、だからわら」
「ー違う」
言葉強めに遮る湊くんの声に、俺は目を開いて、俺より頭一つ分高い、湊くんの顔を見る…ー。
「…春さんが笑うのは、悲しい時。」
ー。
「嫌なことがあった時。色んなこと全部、1人で我慢する時。春さんは、いつだって、悲しいから笑う。あの時も、…今も。」
湊くんの言葉に、俺は笑って、口を震わせる。
…意味…、わかんないよ。…全然、意味わかんねぇよ、湊くん…。だって…、だって、そうじゃん…。
「俺は、」
…俺はーー
「…今でも、全然、楽しいよ…。幸せ…。家族がいて、湊くんがいて、白兎がいて、父さんがいて、母さんもいて、友達もいるよ…。最近仲良くなって、至に…ちょっと似てて、カッコよくて、昔の嫌いな奴にも会ったけど、謝られて、もしかしたら昔に戻れるかもって……」
「……。」
幸せ、俺は、今だって、昔だってずっと、ずっと、幸せ…ー。
「…至は……、」
…至…はーー
「俺と離れても…全然平気そうに…毎日暮らしてるみたい。友達もいるみたいだし…、すごい元気みたい…。良かった、…良かったよ、俺…。あいつが、ちゃんと、…やってってるみたいで…ー」
ー〝俺、今でもずっと藤月くんのことが好きなんです〟
それから不意に思い出す言葉に、俺はハッとして、ぐっと唇を噛む。
…泣くわけにはいかない、…湊くんの前で。
そう思って下ろした両手の拳を強くぎゅっと握ったら、不意に、ぐ…っと頭を引き寄せられる感覚に俺は目を開いた。
「ーっみな」
「泣けばいいじゃないですか、俺の前でだって」
湊くんの肩辺りに顔を埋めながら、俺は瞳を揺らした。
「何でワザと笑うんですか、何で春さんが謝るんですか、何で泣いてるのに…俺の心配するんですか?」
「…ー」
「俺は、そんなに春さんにとって、子どもですか?俺が16で、高校生で、春さんが3つ上で、大学生だからですか…?だけどそんなの、どうにもならないじゃないですか、そんなこと言ったら、俺はずっと、春さんにとって、子どもでしかないじゃないですか…ッ」
耳そばで話す湊くんの言葉を聞いて、俺はただ…驚いていた。
子ども…って、
「…そんなふうに…思ったことは」
「じゃあ、春さんにとって、俺は何ですか…?」
少し俺の体を離して、俺の顔を見て言う真剣な湊くんの顔に、俺は言葉を詰まらせた。
「ーなあ、さっきここに湊が…」
その時、不意に聞こえた白兎の声に俺はハッとした。
ばっとすかさず湊くんの胸を押し返すと、白兎は俺たちを見て固まっていた。
ど、どうしよう…。
「白兎、違う、これは」
「……何やってんの?」
「白兎、あのなっ?」
「…っ、ーーほんっと…気持ち悪いんだよ…!!!」
そのまま踵を返す白兎を見て、俺はそれを追いかけようとして、肩を掴まれる。
「俺が行きます。」
振り向くと、湊くんはそう言ってじっと俺を見ると、去っていった白兎を追いかけて出ていった。
俺は誰もいなくなった部屋で1人佇み、2人の出ていった先を見つめ、呆然としていた。
……もう、…わけわかんねぇ……。
俺はその場に膝をついて座り込み、頭を抱えた…ー。
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