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「湊くんっ、遅れてごめん!」
次の日、バタバタとして家の前に立つ湊くんの元まで行くと、湊くんは大丈夫です、と言った。
「財布持ってくの忘れたり、携帯忘れそうになったり、色々あってさぁ」
あははと笑って、歩く湊くんの隣を歩くと、湊くんは俺の言葉に少し笑った。
「楽しみだなあ、祭り」
「はい」
あの時のことは特に互いに触れずに、俺たちは祭りの場所まで歩いて向かった…ー。
ー
「湊くん、金魚すくいあるよ!やる?」
祭り場所へ着いてから、屋台の前を歩いていてすぐ見つけたそれに俺が笑ってそう言うと、湊くんは俺を見て少し悩み、それから結果的に2人で仲良くやることになった。
湊くんは俺の隣に座って、店のおじさんから渡されたポイを握って、真剣そうに泳ぐ金魚を見つめていた。
俺はそれに気づかれないように1人笑って、俺は慎重に一匹の金魚をすくって器に入れた。
湊くんは、驚くようにそんな俺を見た。
「春さん、金魚すくいも上手いんですか」
もって、何だろう…?と思いながら俺は笑う。
「一匹くらい、みんなとれるよ」
大したことないよ、と続けてそう言うと、湊くんはふと俺から前に向き直って、意気揚々と泳ぐ金魚たちを再び真剣そうに見つめる。
…あ、プレッシャーかけちゃったかな…。
少しやってしまった感を感じつつも隣で慎重に金魚をすくう湊くんの手の動きを見つめる。
すると、
「っあ」
パシャっという音と共に、金魚が跳ねて湊くんのポイから逃れ、水を飛ばす。
うわ、とそれに驚いて慌てて顔の前に手をやると、湊くんが俺を見て、すみませんっ!と途端に謝ってくる。
俺はそれに笑って、湊くんを見る。
「あははっ、意外だな〜〜湊くんこういうの器用そうなのに」
そう言ってまだ笑うと、湊くんは俺を見て、無表情ながらに少しがっかりとした顔を見せるのが分かった。
あ、ヤバイ、傷ついたかな…?
慌てて、とれない時もあるよな〜〜っと言って笑うと、湊くんは言った。
「一匹でもすくって、春さんにプレゼントしたかったのに…」
悔しそうに言う湊くんの言葉に、俺は一瞬目を開いた。
「はは、何言ってんの」
湊くんの言葉の意味に俺は気づかないフリをして、湊くんの背中をぽんぽんと軽く叩いた。
それからだんだんと辺りが暗くなって、俺は食べ終わった焼きそばのプラスチックの容器と箸を持って、座っていた椅子から立ち上がった。
「ついでに捨てるから、ちょーだい」
その時ちょうどたこ焼きを食べ終わった湊くんの空の容器を見て俺が言うと、俺が行きます、と湊くんは言ってその場にすくっと立つと、俺の持ってたゴミまで勝手に取って、さっさとゴミ箱のあるところまで行ってしまった。
…なんだかなぁ。
俺はそれを見てから、苦笑した。
湊くんは俺に、…頼られたい、のかな。
俺は何となく、そう思って笑った。
そうして湊くんが戻ってくるのが分かって、俺は湊くん!と、笑ってそう言おうとして、
ふと、湊くんの近くで見えた、見覚えのある人物に、
俺は大きく目を見開いた。
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