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………あれは…
…だけど、…どうして。
どうして……ーー
「春さん?」
戻ってきた湊くんがそう俺に声をかけた。
俺は立ったまま目を開いて、両手の拳を握っていた。
なんで、……何で?
「…春さん、どう」
「ごめん、湊くん」
聞こえた湊くんの声を遮って、俺はそう言っていた。
「…ごめん。俺、もう、帰る…ー」
俺はそれだけ言うと、その場から走って逃げるように去った。
後ろから湊くんの困惑したような、俺を呼ぶ声が聞こえたけど、それを気にする余裕さえなかった。
…だって、何で。
何で、お前がここに…ー
分からない。もう何も、分からない…ーーっ
すると、ドンっと不意に誰かに強くぶつかるのが分かって、俺はハッとする。
立ち止まって顔を上げると、俺よりでかい背をしたヤバそうな人たちが涙目になる俺を見下ろしていた。
や、ヤバイ…気がするなんかこれ…。
すみません…ととりあえず言うと、緑色に髪を染めたお兄さんに凄んだような顔をされ、それにビクリとして体を震わすと、不意にぐいっと腕を後ろに引かれて体が後ろへと下がる。
突然のそれに驚いて後ろへ下がった時に着地した足を躓きかけると、腕を前にまわされ、それによって体を固定させられる。
…いや、ていうか、転ばずには済んだけどこれって、なんか後ろから抱きしめられてるみたいじゃん…!
さっと後ろを振り向くと、そこにいたのは何故か佐原 翔だった。
ー?!…何故こいつがここにっ?!
頭を混乱させていると、翔が言った。
「こいつは俺の知り合いで、友達なんだ。あんたら、こいつに何か用事か?」
いつもと違う、スッとした大人びた表情で話す翔を見て、俺は少し驚く。
「はあ?用事も何も、こいつが勝手にぶつかってきたんだけど?」
そのままお兄さんにキッとした目で睨まれ再びビクッとすると、翔はそれを見て息をつく。
「なるほど…。お前がわりーんだな」
困ったような顔をする翔を見て、俺は何も言えず下を向く。…だ、だって……。
「つーかぶつかったんなら、金出せよ」
「…はあ?」
「まあお前らガキだから、そんな持ってねーか。1万で許してやる」
そう言ってふははっと悪そうに笑う彼らを見て、俺はそれに怖いと思うものの、頭にはさっきのことばかり浮かんで、何が怖いのかショックなのか、もう何も分からなかった。
翔はそんな俺を見て、それから彼らを見て、そうしてふと笑った。
「1万?ふーん、そんくらいでいいんだ…」
「…ああ?」
「てめえ舐めてんのかコラァ」
すると翔は財布から、不意にバラバラと、万札を上から下へと落とした。
「ここに約20万ある。1万よりはいいかと思うんだけど…どうだ?」
彼らはそう笑って言う翔を見て、明らかにア然としていた。
「行くぞ」
翔はそれから、彼らが油断をしている今のうちにとでも言うようにそう言うと、俺の手を引っ張って、俺は彼に連れられて、
もう暗い夜道を、俺たちは走り続けたー。
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