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「なあ…翔」
俺がそう呼ぶと、翔はポテトを食べていた手を止めた。
「なに?」
平然としたその声に、俺は翔を見つめて、ふと昔の幼い頃の翔の顔を思い出す。
なにも変わってないと、何一つ変わってないと思っていたけれど、もしかしたらそれは俺の思い過ごしか…ー?
ー〝水島…!見て、これ〟
同じ笑顔…に見えるけど、…何か違うのかー?
「あのさ、」
俺はそう口を開こうとして、ふと、目の前に座る翔の握るフォークとナイフが、瞬間的に手から離れて落ちていくのが見えた。
え…ーー?
そして気づいたら、先ほどまで笑っていたはずの翔は大きながちゃんっという食器の音を響かせて、机の上に顔を突いていた。
え、は、…えっ…!?
俺はそれに驚いてしばらく目を開いて翔を見て、それからはあはあと肩で荒い呼吸をする翔にハッとするように気付いて慌てて立ち上がった。
「翔っ?どうした、翔?」
すぐに翔のそばへ急いで駆け寄ってみると、机の上に横向きになって倒れた翔の顔が赤くなっていて、少し汗をかいているのが分かった。
こいつ……まさか…。
俺はぐったりとする翔の体を担いで立ち上がった。ていうかこいつ、…体あっつ!こいつほんと…いつから…。どうして…。
「あの、」
店を出ようとすると、店員にそう声をかけられて、そういえばお金を払っていないことを思い出す。
何円なんだ?そう思って見た領収書を見て、俺はそれからその額に驚いた。
…流石にこんな大金は持ってねぇ!
俺は俺に担がれてぐったりとする翔を見て、少し迷ってから翔の財布をポケットから探る。
そうして翔の財布から万札を何枚か出すと、俺は急いで店を出た。
手を上げて何とかタクシーを拾うと、俺は翔を奥に乗せて、ばんっとドアを閉めた。
「どちらまで?」
タクシーの運転手に聞かれた言葉に、俺は少し黙ってから言った。
ここからだと俺の家が近い…ー
「◯丁目のおっきなスーパーのあるところまで!」
とりあえずそう言うと、俺は辛そうに目を閉じる翔を見て、心配しつつも息を吐いた。
家に着くと、俺は財布から全財産を払って翔を担いでタクシーを降りた。
家の扉前まで行くと、ちょうど白兎が出て来て、俺たちは目を合わせる。
「はくと、」
「…兄ちゃんどうかしたの?この人…どうしたの?」
「多分高熱出してんだ、突然ぶっ倒れて、俺のとこが1番近かったから、ここに」
俺が早口にそう言うと、白兎は玄関の扉を奥まで開けた。
「ありがとな」
俺はそう言って、家の中へと入る。
翔を担いで靴を脱がせて、とりあえず誰もいないリビングのソファに横たわらせると、俺は冷凍庫から氷枕を出してタオルを巻いて翔の頭の後ろに置く。
あとは冷えピタやって、薬…。
「翔〜」
冷えピタを翔の額に貼って、次に薬を飲ませようとして軽くそう呼んで起こすも、翔はビクともしなかった。
すると、はあはあと再び息をしだす翔を見て、俺は翔の頭を少し上に上げて、少しだけ開いた口に無理矢理錠剤の薬を入れてペットボトルに入った水を飲ませる。
「翔、飲んで。これ即効性だから、すぐ治るはず。楽になるから」
俺が言うと、翔は薄っすらと目を開いてごくりと喉を動かした。
そうして翔が再び目を瞑るのを見て、俺は翔の頭をゆっくりと下ろして、そばにあった薄いブランケットを翔の上にかけた。
翔は多分、俺と会った時既に熱を出してたんだ。
こんなに倒れるまでどうして我慢なんかして…。
俺は翔の額から流れ落ちる汗を見て、タオルを持って来てそれを軽く拭いた。
ほんと…、
「びっくりさせるなよ……」
俺はそのうち、すうと寝息を立てる翔を見て、そう呟いた。
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