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ステップアップside旭秀治
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「………こっち見るな」
「ごっごめん………」
威嚇されてひるむ。鋭い目つきのせいでまだ恐怖が和らいでくれないけれど、なんだかむずがゆさも感じ始めていた。
「別に怒ってねえから………つーかむしろ」
なんか嬉しかった。
怯える僕に気付いたのか、吉岡君が慌てたように言った。
絞り出したような言葉に、また僕は耳を疑った。嬉しかった?僕みたいな下等生物に馬鹿にされたような事を言われて嬉しかった?
「なんつーかその………はっ初めて旭にちゃんと名字呼ばれた気がして」
悪いことをして言い訳をするように吉岡君は言う。
「………とっ友達?」
「とっ友達ってやつみたいで、嬉しかった」
「あっその、悪い変なこと言っちまって………!わっ忘れろ」
有耶無耶にして誤魔化そうとされる。席を立ってどこかに逃げようとする吉岡君の制服を反射的につかんだ。驚いたように見下ろされる。僕だって驚いてるよ。
「友達、になってみようよ」
そしてこんなことを言った自分にも。
もう今日の僕は一生分の勇気を使った気がする。
でももっと吉岡君のことを知りたいなって考える僕もいたから。まだ怖いけれど、それ以上に彼のことを知りたいっていう気持ちのほうが勝った瞬間だった。不良なのに優しい君のことが、もっと知りたいんだ。
断られたらどうしようかと思った。顔が熱い。こんなこと言うの初めてだから。
吉岡君も顔を真っ赤にして、黙ったまま頷いた。
吉岡君と、友達になれたみたいです。
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