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ランチタイムside吉岡尋海
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ぶっちゃけ旭と話したい話したいと我儘を言っていた俺だが、いざ願いが叶ったとなると何もすることができなくなった。息をするのも精一杯だ。
「吉岡君はお昼はパン派?」
「………パン、安いから」
「僕はご飯のほうが好きかな。おにぎりとか食べる?」
「たまに」
「具は何が好き?」
「………鮭………」
せっかくお弁当に誘ってくれたのに、無愛想な言葉しか返せない。機嫌なんて悪いわけないだろ。
緊張しすぎてのどが震えているから、あんまり長く喋りたくないだけ。震えているのがばれてしまう。というか俺が好きなのは昆布だ。鮭じゃない。否定することすらままならない。
ああ、この心臓の音が聞こえていたらどうしよう。恥ずかしい。恥ずか死ぬ。俺は旭に殺されるのか。
張りつめた糸を断ち切らないように、ただ一点を見つめる。
卵焼きの黄色と赤ウインナーのコントラストが綺麗だ。旭の弁当、食べてみたいなぁ………。
「この卵焼き欲しい?」
本音をついた言葉のせいで、パンが器官に滑り込みそうになる。
「はあっ?」べっ別に欲しくて見てたんじゃねえぞ!」
本心を暴かれて恥ずかしくも悔しくもある俺は意地を張る。
本当は食べたくて堪らないくせに。変なプライドが邪魔をする。相手に切り出されたらそうだとは言いだしづらくて辛い。
「そっそう?ごめんね………いるわけないよね………」
飼い主に叱られた兎みたいに耳を垂らす。不覚にも激しくときめいた。
「………ぶっちゃけ、欲しい」
そんな殊勝な姿を見て、断るなんてできなかった。する必要もなかった。
ああくそ胸が痛い。本気で死ぬんじゃないのか?
不安がもたげるが、今は旭の卵焼きの味に興味津津だった。
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