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夕暮恋愛side旭秀治
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たまたま手に取った本がたまたま面白いなんてことは、よくあることだ。
少なくとも僕にはある。しかも頻繁に。
何かに引き寄せられたように背表紙に触れ、中身を開くと予想外に広い文字の世界がそこにはあったりして、僕はどうしようもなくその世界に恋しがれてしまうんだ。
これは巷で噂の恋というやつにきっと似ている。
相手のことが気になって仕方がない。
先の展開に笑って泣いて感動して。僕とは別世界の住民たちが愛おしい。
一度触れたら離すことなんて到底出来なくて。
こんなにも素敵な風景が、僕の知らないところでまだまだ存在すると考えただけで頬が緩みそうだ。
出会いと別れを交互に行って、僕は知恵の湖から水をくんでくる。やがて満杯になった桶は静かに列をなしていく。
本に恋している。なんて馬鹿げた恋愛何だろう。
僕は本が好きで、きっと本も僕のことを思ってくれている。なんてことを言ったら危ない人を見るような目つきでみられたのでもう口にはしない。
答えてくれるのは不確かな風の泣き声だけ。
かなわない恋だったとしても、この恋愛だけはやめられそうになかった。
今日もその事例通り、学校が終わっても読書に没頭していた。
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