アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
メッセンジャーside旭秀治
-
あの日を境に、吉岡君のことをまともに見返すことができなくなった。
彼を見るたびに心臓が踊る。
普通に動いていた口も動作が遅くなった。振舞い方もぎこちなくなってしまった。
せっかく平気になったのに。振り出しに戻ったみたいだ。最初の頃みたいな恐怖ないんだけれどね。
「あっ旭。次移動教室だから行こうぜ」
「うっうん………次、なっなんだっけ?」
「りっ理科だったと思うぜ。実験らしいけど」
こんな風にどもらないと会話が成り立たない状態に陥っていた。吉岡君も吉岡君で挙動不審さがますますヒートアップしている。
油の切れたロボットのように違和感がある動きをする。僕もきっと同じなんだろう。
はたから見たらロボットダンスを踊りあっている二人にしか見えないんじゃない?考えると恥ずかしさでどうにかなりそうだから思考を打ち切った。
背丈があまり変わらない吉岡君の半歩後ろをトコトコ歩いていく。
視線は汚れた廊下に落としている。
前を見て歩かないと危ないのは重々承知しているけど、それよりもっと危険なものがありそうな気がして怖くて背筋を伸ばせなかった。
ちらりと目線をあげると、ちょうど吉岡君も振り返ったらしく、ばったり目と目が合った。
数秒見つめて同時に反らす。完璧なまでに同じタイミングだった。変に呼吸が合ったね。
僕は一体これからどう吉岡君と接していけばいいんだろう?
これからの展開が惑い揺れて輪郭が定まらない。友達なのに、なんでこんなにも迷う必要があるんだ。
まさか、僕、吉岡君のこと、友達って思ってない?
もしそうだとすると、僕は吉岡君をどう認識してるんだろう。自分のことなのにわからなくて自問自答した。
この曖昧な関係が嫌じゃないなんて思った自分がいることに、まだ僕はちゃんと気付けてなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 84